研究課題/領域番号 |
22K09714
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
野島 愛来 順天堂大学, 医学部, 非常勤助手 (90897472)
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研究分担者 |
池田 勝久 順天堂大学, 医学部, 特任教授 (70159614)
美野輪 治 順天堂大学, 医学部, 非常勤講師 (00181967)
呉林 なごみ 順天堂大学, 医学部, 客員准教授 (50133335)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 加齢性難聴 / カルシウム / 老化 / マウスモデル / イメージング |
研究実績の概要 |
老人性難聴は老化に伴う進行的な感音難聴であり、原因として議論されるものは多岐に渡る。これらは様々なレベルに帰属し、それぞれは多様な発症要因のひとつであって、全体を含めて発症に至る多様なネットワークを考える必要がある。ヒトの疾患そのものの詳細な解析は困難である事を考えると、加齢と環境ストレスを入り口とした全容解明のためには、加齢性難聴の動物モデルが必要であって、細胞内Ca2+動態が細胞内の多くの過程に関与するならば、長期間に渡り進行する聴覚機能障害・細胞障害を示すマウスモデルPmca2変異体4系統の解析は、Ca2+動態と難聴進行性にどのような関係があるかを明らかにする上で有用である。 加齢性・老人性難聴の増加に伴い、その詳細な発症機構解析のためにはマウスモデルの必要性が高いにもかかわらず、加齢進行性難聴マウスモデルの詳細な機構の解析は例が限られている。そこで、本研究では極めて長期間に渡り明瞭に進行性聴覚障害の表現型を示す変異体マウスを用い、継時的な表現型記述と組織学的解析を実施する事により、加齢性・老人性難聴モデルとしての意義を検討するための基礎的知見を集積する。更に、細胞内カルシウム動態異常が加齢性聴覚障害における細胞変性の主要な原因の一つであるという仮説を基に、変異体有毛細胞の生理学的解析法である蛍光イメージングによりカルシウム動態を観測するシステムを用い、その動態異常と進行性難聴の間にどのような関係があるのかを明らかにするための緒を探索する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【Pmca2変異体表現型の継時的追跡】 変異体マウスの導入・生産を行い、カルシウム代謝異常が聴覚機能をもたらしている証拠を得るためのモデルの準備を進めた。表現型の継続観察を行うための変異体マウスの導入および繁殖に時間を要している。 【Pmca2変異体の発現細胞構築】 変異体有毛細胞の生理学的解析のために、モデルとしてPmca2変異体の発現細胞を構築した。これらを用い、カルシウム蛍光イメージング法によりflux dynamicsの解析を行なった。
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今後の研究の推進方策 |
極めて長期間に渡り継時的聴覚機能障害・細胞障害を示すマウスモデルであるPmca2の変異体4系統を用いて、長期にわたる環境ストレス或は加齢そのものが内耳機能障害・細胞障害を誘起する機構・分子経路の詳細を明らかにする緒を探索する。具体的には、まず①細胞内Ca2+-排出調節異常がもたらす有毛細胞機能低下と細胞障害の両過程を明瞭に区別できるかを、聴性脳幹反応(ABR)と組織学的解析を継時的に行うことにより明らかにする。次に②変異から単離した内耳有毛細胞またはex vivoでのカルシウム動態を観測するシステムを利用し、Ca2+動態異常と進行性表現型の間に相関があるか否かを明らかにする。また③細胞障害を示すマーカー抗体、即ち、Apoptosis, Senescence, autophagyの各マーカー、更に近年注目されているStress granuleマーカーを用いて組織学的解析を行い、このマウス変異体において実際に生じている細胞障害の経路を推定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19感染拡大による世界情勢の影響から、予定していた機器備品や一部試薬の納品が大幅に遅延となったため次年度使用額が生じたが、その他予算の使用については概ね計画通りであった。
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