研究課題
令和4年度および令和5年度は次の仮説を基に研究を行った。咽頭期嚥下障害における嚥下後の咽頭残留は、嚥下内視鏡検査での評価において、主要な残留部位である喉頭蓋谷(VAL)と梨状陥凹(PS)の残留程度を区別して評価することが重要な知見になると予想された。そこで、2010年1月から2023年4月までの嚥下機能改善手術を行ったワレンベルグ症候群31例を対象に、後方視的に咽頭期嚥下障害における唾液の咽頭残留と嚥下圧の関連性を検討した。嚥下内視鏡の評価では兵頭スコアに加えて、新たに開発した4段階の唾液貯留(Saliva residue: SR)スコア分類を基に、高解像度マノメトリー(HRM)データとの比較解析を行った。結果、VALのSRスコアは中咽頭最大圧とDistal contractile integral(DCI)、および中下咽頭DCIと負の相関があった。PSのSRスコアはHRM因子と相関がなかった。兵頭スコア項目④と嚥下時間は負の相関、嚥下速度は正の相関があった。このことから、嚥下内視鏡検査において、VALでの嚥下後の咽頭残留は、食道入口部の機能とは無関係に、中咽頭レベルでの咽頭収縮の弱さを示すことが明らかになった。また、嚥下内視鏡検査でのSRスコアリングは、咽頭期嚥下障害における咽頭各部位での圧力差を評価する簡易的指標になる可能性があることを示した。本研究におけるこれまでの実績は米国の英文雑誌The Laryngoscopeに令和5年度に受理された。
3: やや遅れている
2023年度に研究対象となった経口的嚥下機能改善手術の必要条件と除外条件を満たした嚥下障害症例が少数であったため。
引き続き嚥下障害の症例を蓄積し、手術公開に影響する因子を抽出した上で統計学的解析により最も低侵襲で合理的な手術法を導き出す。
登録症例が少なく、既存物品にて賄えたため。しかし次年度以降には症例登録が増加すると予想されるため、次年度使用を行い実験計画に則って使用する予定である。
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The Laryngoscope
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10.1002/lary.31358