研究課題/領域番号 |
22K09738
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 壽一 京都大学, 医学研究科, 名誉教授 (90176339)
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研究分担者 |
西村 幸司 滋賀県立総合病院(研究所), その他部局等, 嘱託研究員 (20405765)
扇田 秀章 滋賀県立総合病院(研究所), その他部局等, 専門研究員 (20761274)
大西 弘恵 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (50397634)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 内耳 / 再生 / iPS細胞 / 人工内耳 / 光刺激 / 難聴 |
研究実績の概要 |
種々の内耳障害で難聴が生じる。難聴に悩む人はおおよそ世界人口の 5%(約4億人)であり、65 歳以上の3 分の 1 が日常生活に支障をきたす中等度難聴以上である。高齢者では難聴が認知症の最も大きな危険因子の一つである。さらに、新生児 1000 人に対して 1~2 人が両側高度難聴児(聾)である。感音難聴(特に高度感音難聴)は治療不可であったが、人工内耳が臨床応用されるに至り世界中で約70万人の高度難聴患者がその恩恵を受けている。人工内耳は優れた医療であるが、人工内耳装用者の聴覚の質は健聴者と同等ではなく、また患者によっては人工内耳を装用しても言葉の聞き取りが極めて劣る場合もある。その大きな理由は、1)人工内耳は残存蝸牛神経を直接電気刺激し、聴覚を回復せしめる医療であるが、高度難聴者の多くは蝸牛神経自体も障害を受けている場合があり、人工内耳からの刺激が十分伝わらないことがある。2)人工内耳からの刺激は電気刺激であり、局所的に蝸牛神経を刺激するのに問題がある。これらを解決すべく、以下の研究を行う。 本研究では、(1)ヒト人工多能性幹細胞(ヒトiPS細胞)から誘導した蝸牛神経前駆細胞を、蝸牛神経を障害した難聴モデル動物の内耳(蝸牛)に移植することにより、蝸牛神経を再生させ、聴覚が回復するかを検証する。(2)人工内耳から蝸牛神経を刺激するのに、電気刺激の代わりに光刺激を用いる新たな人工内耳を作製し、動物に対する有効性の検討を行う。(3)ヒトiPS細胞の移植で再生した蝸牛神経を有する難聴動物に対し、光刺激人工内耳を使用し、その有効性(難聴の回復)を検証する。 本研究の、蝸牛神経再生と新規光刺激人工内耳とのハイブリッド医療の研究は、高度感音難聴で苦しむ難聴者の聴覚を回復する革新的医療の基礎になると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)高度感音難聴患者の病態を模した難聴モデル動物を作成した。本研究では2種類の難聴モデル動物を作製した。①蝸牛有毛細胞と蝸牛神経両者の障害モデル動物。②蝸牛神経のみを障害し、蝸牛有毛細胞はほぼ正常に保たれる難聴モデル動物。なお、研究を通して、実験動物にはモルモットを使用した。 ①にはカナマイシン、フロセミドの全身投与を行った。②には、Na+/K+ ATPase 阻害剤であるジゴシンの蝸牛内直接投与を行った。①、②とも、比較的安定した障害モデル作製することができた。 2)移植細胞ソースの蝸牛神経前駆細胞をヒトiPS 細胞から誘導した。 本研究期間を通じて、ヒトiPS細胞から誘導した蝸牛神経節細胞(前駆細胞)を細胞移植実験に提供する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1)蝸牛神経障害モデル難聴動物にヒトiPS 細胞由来蝸牛神経前駆細胞を移植し、聴覚の回復、蝸牛神経の再生を電気生理学的、組織学的に検討する。本研究では移植用手術ロボットも用いることとする。本研究期間を通してこれらの精度を上げるべく改良を加え、正確な移植を目指す。 2)光刺激聴性脳幹反応(oABR)の測定系の樹立と光刺激人工内耳電極の試作。光刺激にはレーザー波長505 nm、最大出力50 mWのレーザー光などを用いる。蝸牛神経に組み込む光刺激タンパクとして、チャネルロドプシンの1種であるChronos-ES/TSなどを用いる。研究期間を通じてより蝸牛神経の位置特異的に刺激可能な多チャンネル光刺激プローブを作製する予定である。 3)光感受性ヒトiPS細胞由来蝸牛神経前駆細胞の作成をおこなう.効率よく光刺激タンパク(チャネルロドプシン)をヒトiPS細胞に組み込む方法を樹立する。光刺激タンパクとして、チャネルロドプシンの1種であるChronos-ES/TSを、AAV血清型としてすでに蝸牛神経に発現を確認したAAV2に加えて、PHP.B、アデノ随伴ウイルスAnc80L65などを検討比較する。光刺激タンパクを組み込んだiPS細胞を蝸牛神経前駆細胞へ誘導し、移植に供する予定である。 4)蝸牛障害モデル難聴動物に、光感受性ヒトiPS細胞由来蝸牛神経前駆細胞を移植し、そこに光刺激人工内耳を装着し、人工内耳からの刺激での聴覚の回復を検討する。その後蝸牛神経の再生に関しては組織学的に検討する。難聴モデル動物を作製し、光感受性ヒトiPS細胞由来蝸牛神経前駆細胞を確立、移植に供する準備を行う。試作した光刺激人工内耳電極を蝸牛内に装着する。再生した蝸牛神経と、光刺激人工内耳で聴覚が回復するかを確認する。聴覚機能検査が終了すれば、移植細胞の確認、組織の障害などの検討のため、組織学的研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
R4年度予算により施行したのは、1)高度感音難聴患者の病態を模した難聴モデル動物を作成した。2)移植細胞ソースの蝸牛神経前駆細胞をヒトiPS 細胞から誘導した。などであり、COVID-19 などのため学会出張などは少なく、次年度に繰り越すことができた。
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