研究課題/領域番号 |
22K09749
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
山下 拓 北里大学, 医学部, 教授 (00296683)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | CD109 / REV7 / ノックアウト / 癌細胞雄株 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
中咽頭扁平上皮癌患者の摘出ないし生検の臨床検体を用いてp16免疫染色およびCD109免疫染色を行った。その結果、p16陽性中咽頭扁平上皮癌においてCD109陽性群はCD109陰性群と比較して無増悪生存率が有意に不良であることを確認した(p < 0.01)。またヒトp16陽性中咽頭癌細胞株においてCD109の強発現が認められることをWestern Blotで確認後、siRNAにてCD109発現をノックダウンしたところ、CD109ノックダウンp16陽性中咽頭癌細胞株では野生株に比較しインベージョンアッセイにおける腫瘍浸潤能の低下がみられた。 p16陰性頭頸部扁平上皮癌細胞株であるHSC-3およびFaDu、p16陽性頭頸部扁平上皮癌であるUM-SCC-47およびUM-SCC-104を用い、シスプラチン感受性の検討に適切な細胞播種濃度およびシスプラチン濃度の条件を検討した。この条件検討はCD109ノックアウトによるシスプラチンに対する感受性の変化を今後検討するために必要である。 また、上記の4種類の細胞株を用い、CRISPR-Cas9システムによる遺伝子導入、遺伝子導入に必要なプラスミド精製、遺伝子導入した細胞のセレクション、遺伝子導入した細胞のノックアウト効果検証に必要な条件検討および手技取得をそれぞれ行っている。現時点ではFaDuに対してリポフェクタミン試薬を用いたプラスミド法によるREV7のノックアウトとピューロマイシン耐性遺伝子導入を利用したセレクションの条件検討が達成できている。CD109のノックアウトの条件検討も並行して進めている。REV7のノックアウトに用いるプラスミドを精製するための大腸菌ノックアウトベクターは当大学の病理学教室が所有しているものを使用しているが、ノックアウトベクター作成および精製したプラスミドのシーケンス確認に関する手技は並行して取得中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記の4種類の細胞株に対するノックアウトの条件や適切なセレクション方法の検討が難渋している。リポフェクタミン試薬を用いた遺伝子導入以外に、エレクトロポレーションによる遺伝子導入の検討も行ったが少なくともFaDuに対しては不適当な方法であった。また、ピューロマイシン耐性遺伝子ではなく緑色蛍光蛋白質を用いたセレクションが適当であるか検討するため、緑色蛍光蛋白質を含むプラスミドも新しく精製してFaDuおよびHSC-3に導入し、セルソーターを用いてセレクションを行ったがこの方法も不適当であった。
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今後の研究の推進方策 |
FaDu以外の3種類の細胞株の遺伝子導入およびセレクションの条件検討を引き続き進める。並行してCD109のノックアウトのための大腸菌ノックアウトベクター作成を行う。 その後にCD109のノックアウト細胞株を樹立させ、シスプラチンに対する感受性の変化を検討する予定である。 またCD109ノックアウト頭頸部癌細胞株、REV7ノックアウト頭頸部癌細胞雄株を作成することで、これらの因子の腫瘍増殖、腫瘍浸潤、化学療法や放射線治療感受性への関与について明らかにし、治療ターゲットとしての可能性を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
4種類の頭頸部癌細胞株に対するノックアウトの条件や適切なセレクション方法の検討が難渋しており、ノックアウト細胞株の作成がまだ中途であるため、これらの細胞株を用いた増殖能、浸潤能、治療感受性の実験がまだできておらず、これらに要する経費が今年度未使用となった。次年度、ノックアウト細胞作成が完成後にこれらの検討を行うため次年度使用額が生じた。
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