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2022 年度 実施状況報告書

S100A10による頭頚部癌の増殖・転移制御機構の解明と治療への応用

研究課題

研究課題/領域番号 22K09758
研究機関地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所)

研究代表者

小鎌 直子  地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん先進治療開発研究部, 主任研究員 (30390892)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードがん
研究実績の概要

癌幹細胞(CSC)は、頭頚部癌の治療標的として期待されている。私達は、独自に樹立した頭頸部がん細胞株(HPCM2)を用いてCSCのプロテオミクス解析を行い、S100A10がCSCに特異的に発現していることを突き止めた。S100A10はこれまで、がんとの関わりについては、ほとんど未解明な分子であるが、予備的解析から、S100A10は癌幹細胞性や悪性度と相関しており、S100A10ノックアウト細胞は、細胞骨格系に顕著な異常を生じた。また、共焦点顕微鏡を用いて細胞骨格を観察したところ、中間径フィラメントを構成するビメンチンがほぼ完全に消失していることを発見した。ビメンチンは、上皮間葉系転換(EMT)の最重要分子であることから、S100A10が頭頚部癌の悪性度を制御している可能性が急浮上した。本研究でS100A10に焦点を絞り、①CSCを誘導・活性化する分子基盤は何か?、②転移と浸潤における細胞骨格の役割は何か?、③ビメンチン制御とEMTにおける役割は何か?、④診断マーカーおよび治療標的としての妥当性はあるか?、を検討する。本研究により、S100A10による頭頚部癌制御の分子基盤を解明し、診断と治療に向けた研究を展開する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

S100A10の同定は、癌幹細胞(CSC)の解析から得られた成果である。そこで、ヒト頭頚部癌PDX細胞株(HPCM2)について、S100A10のノックダウン細胞およびノックアウト細胞を樹立し、S100A10と癌幹細胞との関連性を、in vitro および in vivo の両面から解析した。その結果、in vitro では、親細胞と比較して、S100A10ノックアウト細胞は、スフィア形成能や、がん幹細胞マーカーレベル、数種の薬剤耐性遺伝子の発現が低下しており、癌幹細胞性との関わりを示した。しかし、がん幹細胞マーカー遺伝子や、別種の薬剤耐性遺伝子の発現については、親細胞との差はみられなかった。一方、in vivoにおいては、超免疫不全マウス(NOG)を使って、造腫瘍能の比較を行った。その結果、親細胞とは対照的で驚くべきことには、マウスに移植されたS100A10ノックアウト細胞は、腫瘍を全く形成できないことが判明し、S100A10と癌幹細胞性との強い関連性が示された。
ここまでの解析により、S100A10が癌幹細胞性と深く関わっていることが明らかとなり、今後のS100A10のがん悪性化に関するメカニズム解明が順調に進められると考えられるから。

今後の研究の推進方策

今後は、以下のような研究を推進していく。
頭頸部扁平上皮癌の浸潤・転移では細胞骨格系の活性化が必須であるが、S100A10による制御についてはほとんど解明されていない。そこで、S100A10が過剰発現するHPCM2細胞株と、S100A10ノックアウト株を用いて、①細胞遊走能、②細胞浸潤能を解析し、さらに、③細胞骨格マーカーとしてビメンチン・Actin・Tubulinを共焦点顕微鏡で観察し、④EGFやTGFβ刺激応答を解析する。これによって細胞形態と骨格系に対する影響、遊走・浸潤での役割を解明する。
また、EMTは頭頚部扁平上皮癌の浸潤・転移においても必須であるが、S100A10によるEMT制御については未解明である。これまでの解析によって、S100A10をノックアウトするとVimentinの発現が消失するという驚くべき結果を得ている。そこで、⑤間葉マーカーVimentinと上皮マーカーKeratin14およびE-cadherin、⑥細胞間接着に対するS100A10の役割を解析し、さらに、⑦S100A10ノックアウト細胞にVimentinを発現した際の遊走・浸潤の回復を解析する。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍により、実験に使用する消耗品等の納品が滞り、実験が思うように進まなかったため。

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公開日: 2023-12-25  

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