研究課題/領域番号 |
22K09774
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
町田 繁樹 獨協医科大学, 医学部, 教授 (30285613)
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研究分担者 |
西村 智治 獨協医科大学, 医学部, 講師 (40633128)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 糖尿病網膜症 / 網膜電図 / ERG / OCT / OCTA |
研究実績の概要 |
糖尿病患者を対象として網膜電図(ERG)と光干渉断層計血管撮影(OCTA)を行ってきた。ERGとしては、網膜全体を刺激する全視野刺激ERGと黄斑部から応答を記録する黄斑局所ERGを用いて網膜全体と黄斑部の機能を電気生理的な手法で評価してきた。また、OCTAとしては3 x 3 mmと15 x 15 mmの画角で撮影し黄斑部と広範囲の網膜血管の構造を解析してきた。ERGおよびOCTAを様々な病期の糖尿病網膜症(DR)を有した糖尿病患者で記録し、今までいくつかの新知見を得ており、昨年京都で開催されたInternational Society for Clinical Electrophysioloy and Visionで発表した。 OCTAで得られたvascular denisity(VD)が黄斑局所ERGの律動様小波(OPs)の頂点潜時に影響をあたえること。DRの網膜機能評価として用いられてきたOPsと30 HzフリッカーERGの診断能力には差がないが、それぞれの頂点潜時が振幅よりもはるかに診断能力が高いことが判った。論文は現在作成中である。 今後は既設のfunctional OCTAを新たな検査項目として加えてデータの集積を行う予定である。functional OCTを用いることでneuro-vascular unitの機能を評価できると考えている。糖尿病患者における血糖コントロールあるいはDRがfunctional OCTAにどのような影響を及ぼすかを検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在まで研究はおおむね予定通りに進捗している。現在まで下記の新知見を得ている。1. 早期のDR患者では、黄斑局所ERGの律動様小波(OPs)の頂点潜時と振幅は、3 x 3 mm画角のOCTAで得られたvascular density(VD)と有意に相関していた。また、臨床的な明らかなDRを有さない患者(non-DR)でも、OPsの頂点潜時とVDが相関していた。黄斑部の血管構造変化が黄斑機能に変化をもたらしていることが分かった。2. 全視野刺激ERGのOPsと30 HzフリッカーERGはDRの網膜機能評価に使われてきた。しかし、どちらがより有用な検査法なのかは明らかではない。そこで、OPsと30 HzフリッカーERGのDR診断能力をReceiver operating characteristic(ROC)曲線を用いて評価した。その結果、OPsと30 HzフリッカーERGの診断能力には有意差が無く、これらの頂点潜時は振幅よりも有意に診断能力が高いことが分かった。3. OPsおよび30 Hz フリッカーERGと3 x 3 mm画角のOCTAで得られたVDとの相関を検討した。30 Hz フリッカーERGの頂点潜時が深層網膜毛細血管網のVDと最も強く相関していた。
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今後の研究の推進方策 |
網膜にフリッカー光刺激を加えると網膜毛細血管が拡張する。この現象をOCTAで観察しneurovascular unitの機能を評価するのがfunctional OCTAである。今後、早期のDR患者を対象としてfunctional OCTAを行い、他の検査(OCT, OCTA, ERG, 黄斑局所ERG)との関係を検討する予定である。更に、血糖コントロールがfunctional OCTA所見に及ぼす影響についても検討する予定である。また、現在まで得ている新知見を論文としてpublishでいるよう努力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はコンタクトレンズ電極の損傷がなく既存の電極でERG記録を行ったため、新規購入は無かった。しかし、コンタクトレンズ電極は消耗品であるため、次年度に新規購入が必要である。
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