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2022 年度 実施状況報告書

AZOOR complexにおけるmicroRNAを用いたバイオマーカーの探索

研究課題

研究課題/領域番号 22K09775
研究機関杏林大学

研究代表者

岡田 アナベル・あやめ  杏林大学, 医学部, 教授 (50303962)

研究分担者 中山 真紀子  杏林大学, 医学部, 学内講師 (30736278)
渡邊 交世  杏林大学, 医学部, 非常勤講師 (90458901)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード網膜外層障害
研究実績の概要

急性帯状潜在性網膜外層症(acute zonal occult outer retinopathy: AZOOR)は若年女性に好発し、急激な視力低下と網膜外層障害が生じる視力予後不良の疾患であり、その発症に自己免疫学的な機序が指摘されている。一方、多発消失性白点症候群(multiple evanescent white dot syndrome: MEWDS)は患者背景がAZOORと共通している一方で視力予後の比較的良好な疾患であることから全身的な炎症・免疫学的な反応の違いも推測される。本課題ではMEWDSとAZOOR患者血清中のmicroRNAの発現パターンを比較することでepigeneticな視点からの各疾患の病態理解・分類に有用なバイオマーカーの確立を目指すことを目的とした。
令和4年度はAZOOR、およびMEWDSと診断された症例と健常人より血清採取し、マイクロアレイ解析、クラスター解析を行った。その結果、健常人、AZOOR群、MEWDS群の3群比較では健常人と疾患群(AZOOR+ MEWDS)は異なるクラスターに分類されたが、AZOORとMEWDSは同一クラスター内に分布していた。健常人と比較しAZOOR, MEWDSで共通して上昇を示したmiRNAは5種類、MEWDSのみで上昇を示したmiRNAは5種類、AZOORのみで上昇したmiRNAはみられなかった。一方、AZOOR, MEWDSで共通して低下を示したmiRNAは3種類、MEWDSのみで低下を示したmiRNAは2種類、AZOORのみで低下を示したmiRNAは22種類であった。これらの結果からAZOORとMEWDSでは近似したmiRNAの発現パターンを示す一方で、個々のmiRNAのレベルでは発現の違いがみられるものもあり、これらの発現の違いが各疾患のphenotypeの違いに関連している可能性が考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

令和4年度では悪性腫瘍などのバイオマーカーとして注目されている microRNA (miRNA)に着目し、MEWDSとAZOOR患者血清中のmicroRNAの発現パターンについてマイクロアレイの手法を用いて解析を行った。さらにそれらの結果から、クラスター解析、主成分解析などの機械学習の手法を用いて発現パターンの類似性について検証した。その結果、1) MEWDSとAZOORのmiRNA のプロファイルは健常人とは異なった発現パターンを示した。2) MEWDSとAZOORで比較したところ、ともに近似した発現パターンを示した。3) 健常人と比較した場合にMEWDSとAZOORで共通して発現上昇、低下していたmiRNAが存在していた。その一方でMEWDSのみ、AZOORのみで発現上昇、低下していたmiRNAが存在していた。
以上の解析結果からはepigenetic な変化としてはMEWDSとAZOORで共通している面があるものの、個々のmiRNAのレベルでみると両疾患の間で違いがみられることから、これらの発現の変動の差異がMEWDSとAZOORとの病態の違いに関連していることが推測された。来年度は症例数をさらに増やし、同様の結果が得られるかさらに検討を行う予定である。上記の結果から今年度の達成度は総合的にみて中程度であると考える。

今後の研究の推進方策

令和5年度は以下の2点について検討を行う。
1)今年度に得られた結果をもとに、MEWDSとAZOORの新規症例から血清を採取し、gene chipを用いたマイクロアレイ解析、クラスター解析、主成分解析を行い、miRNAの発現パターンの近似性についてさらに検討を加える。マイクロアレイ解析で得られた結果について抽出されたmiRNAを基に公共データベースKEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)を用いて、gene-network pathwayを明らかにし、各疾患に共通したpathway、または特異的なpathwayを抽出することで病態形成の分子機序について考察する。
2) 解析を行ったMEWDS、およびAZOOR症例の経過中の視力、治療内容などの情報と、miRNAの発現パターンとの関連について検討し、予後予測に繋がる新たなバイオマーカー について探索を進める。
3) MEWDS、およびAZOORで発現の低下、または上昇したmiRNAについてぶどう膜炎の動物モデルとして知られる実験的自己免疫性ぶどう膜炎(EAU)を誘導し、眼内、または全身にそれらのmiRNAを補充することでEAUの病態に変動がみられるか評価し、miRNAを用いた眼炎症疾患に対する治療の可能性について検討する。

次年度使用額が生じた理由

令和4年度ではマイクロアレイの手法を用いて健常人、MEWDSとAZOORの血清中microRNAの発現パターンの比較を行った。本研究ではマイクロアレイを用いたmiRNAの発現解析、その結果を基にしたクラスター解析、主成分解析を施行したがCOVID-19感染対策の目的で研究室内の実験機器の使用制限、また使用時間の調整を行った。また当初の予想よりもMEWDSとAZOORの新規症例数が少なかったため解析可能な検体数が予定よりも少なかった。このため未使用の研究費は次年度へと繰り越しした。
令和5年度はMEWDSとAZOORの新規症例について血清中microRNAの発現パターンを比較検討し、両疾患に共通するpathway、特異的なpathwayを抽出する。さらに診療録から視力予後とmiRNAとの発現パターンとの関連について解析する。これらの検討を通じて各疾患の病態をepigeneticな視点から考察し、診断、および予後予測に繋がる新たなバイオマーカーを探索する。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] COVID-19 vaccination-related intraocular inflammation in Japanese patients.2023

    • 著者名/発表者名
      Nakayama M, Okada AA, Hayashi I, Keino H
    • 雑誌名

      Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol.

      巻: 261 ページ: 897-899

    • DOI

      10.1007/s00417-022-05866-5.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A COVID-19 Risk Reduction Strategy for the Treatment of Acute Vogt-Koyanagi-Harada Disease Utilizing the Antiviral Potential of Cyclosporine2023

    • 著者名/発表者名
      Nakayama M, Okada AA, Hayashi I, Ando Y, Watanabe T, Keino H.
    • 雑誌名

      Ocul Immunol Inflamm m .

      巻: 32 ページ: 462-467

    • DOI

      10.1080/09273948.2022.2028293.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Compromised blood flow of the optic nerve head in acute retinal necrosis2022

    • 著者名/発表者名
      Hayashi I, Keino H, Inoue M, Okada AA
    • 雑誌名

      Clin Exp Ophthalmol.

      巻: 50 ページ: 685-687

    • DOI

      10.1111/ceo.14114.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Prognostic value of subfoveal choroidal thickness in new-onset acute Vogt-Koyanagi-Harada disease2022

    • 著者名/発表者名
      Nakayama M, Keino H, Watanabe T, Okada AA
    • 雑誌名

      .Clin Exp Ophthalmol.

      巻: 50 ページ: 678-680

    • DOI

      10.1111/ceo.14088.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Automated Quantitative Analysis of Anterior Segment Inflammation Using Swept-Source Anterior Segment Optical Coherence Tomography: A Pilot Study.2022

    • 著者名/発表者名
      Keino H, Aman T, Furuya R, Nakayama M, Okada AA, Sunayama W, Hatanaka Y
    • 雑誌名

      Diagnostics

      巻: 12 ページ: 2703

    • DOI

      10.3390/diagnostics12112703

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Clinical features and visual outcomes of ocular sarcoidosis at a tertiary referral center in Tokyo.2022

    • 著者名/発表者名
      Nagahori K, Keino H, Nakayama M, Watanabe T, Ando Y, Hayashi I, Abe S, Okada AA
    • 雑誌名

      Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol.

      巻: 260 ページ: 3357-3363

    • DOI

      10.1007/s00417-022-05701-x.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Comparative Analysis of Serum microRNA in Diagnosed Ocular Sarcoidosis versus Idiopathic Uveitis with Ocular Manifestations of Sarcoidosis2022

    • 著者名/発表者名
      Saito S, Keino H, Takasaki I, Abe S, Kohno H, Ichihara K, Hayashi I, Nakayama M, Tsuboshita Y, Miyoshi S, Okamoto S, Okada AA
    • 雑誌名

      Int J Mol Sci.

      巻: 23 ページ: 10749

    • DOI

      10.3390/ijms231810749.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] COVID-19パンデミックにおける急性期Vogt-小柳-原田病の治療選択2022

    • 著者名/発表者名
      中山真紀子, 慶野博, 林勇海, 安藤良将, 岡田アナベルあやめ
    • 学会等名
      第126回日本眼科学会総会
  • [学会発表] MEWDSの日本人患者の特徴 全身ステロイドの投与が最終視力に及ぼす影響.2022

    • 著者名/発表者名
      2.近藤峰生, 齋藤航, 石田晋, 國吉一樹, 上野真治, 林孝彰, 中野匡, 早川卓浩, 角田和繁, 慶野博, 岡田アナベルあやめ, 中村考介, 秋山英雄
    • 学会等名
      第126回日本眼科学会総会
  • [学会発表] SUNワーキンググループによる25のぶどう膜炎疾患の分類基準2022

    • 著者名/発表者名
      4.岡田アナベルあやめ, 望月學, 大野重昭, 慶野博, 高瀬博, 南場研一, 渡邊交世, 鴨居功樹
    • 学会等名
      第126回日本眼科学会総会
  • [学会発表] ベーチェット病ぶどう膜炎に対するインフリキシマブ治療の5年以上の検討:多施設研究2022

    • 著者名/発表者名
      3.竹内大, 臼井嘉彦, 南場研一, 慶野博, 竹内正樹, 高瀬博, 鴨居功樹, 長谷敬太郎, 伊東崇子,中井慶, 丸山和一, 小林恵里, 堀純子, 真下永, 佐藤智人, 大黒伸行, 岡田アナベルあやめ, 園田康平, 後藤浩, 水木信久
    • 学会等名
      第126回日本眼科学会総会
  • [学会発表] OVID-19ワクチン接種後に発症した眼炎症疾患8例における臨床経過2022

    • 著者名/発表者名
      6.中山真紀子, 慶野博, 林勇海, 安藤良将, 岡田アナベルあやめ
    • 学会等名
      第55回日本眼炎症学会

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公開日: 2023-12-25  

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