研究実績の概要 |
本研究では,メトホルミン(Met)とヒドララジン(Hyd)の投与によるNuclear factor erythroid 2-related factor 2 (Nrf2)-酸化ストレス応答系を介した内因性抗酸化タンパクの発現調節やAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)シグナルの活性化による抗糖化作用について解析した。MetとHyd点眼による,水晶体のNrf2/ARE抗酸化経路を活性化についてin vivoで解析した。16月齢の高齢ラットにMet点眼を8日間施行したところ,水晶体にMetの移行を超高速高分離液体クロマトグラフによる測定で確認した。さらに, 水晶体樹皮細胞(LEC)におけるのNrf2誘導抗酸化タンパク(Peroxiredoxin6, NQO1)のmRNA, タンパク発現が上昇した。Met点眼によりAMPK活性が上昇し,Nrf2タンパク発現が上昇し,Nrf2の核移行も上昇していた。次に,Metの糖化ストレスに対する影響を培養実験で確認した。マウス培養LEC (mLEC)とヒト培養LEC (HLEC)を,最終糖化産物(AGE) (0.5mg/ml)負荷+Met(1mM)またはAMPK阻害剤のCompound C (10μM)またはAGE阻害剤のアミノグアニジン添加培養液で3日間処理したところ,AGEs負荷のみでは細胞生存率が減少していたが,Met(1mM)添加群,Compound Cまたはアミノグアニジン添加群で有意に細胞生存率の上昇が確認できた。よって,本研究結果よりMetは点眼により,LECに移行し,酸化ストレス応答系を介した内因性抗酸化タンパクの発現をin vivoで上昇させることが明らかとなり,またMetは糖化ストレス抑制作用があるをin vitroで確認した。
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