研究課題/領域番号 |
22K09782
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
新明 康弘 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (00374398)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 緑内障 / ミュラー細胞 / 神経保護 / アクアポリン4 / グリンパティックシステム |
研究実績の概要 |
緑内障に関して、現在エビデンスに基づく唯一の治療法は眼圧下降療法であるが、本邦では眼圧が正常範囲を示す正常眼圧緑内障がその病型の7割を占め、眼圧に依存せず直接神経を保護する治療の開発が望まれている。緑内障治療点眼として上市されているアドレナリンα2受容体作動薬のブリモニジン点眼液は、その眼圧下降効果に比して強い緑内障進行抑制効果があることから神経保護作用も合わせ持つと考えられ、網膜グリア細胞であるミュラー細胞への作用が注目されている。また近年、脳科学のトピックに水チャンネル、アクアポリンを介した老廃物除去機構の発見があり、リンパ組織を持たない脳ではグリア細胞がこの役割を担うことがわかった。これはグリンパティックシステムと呼ばれている。一方、眼内においては網膜固有のグリア細胞であるミュラー細胞がこの役割を果たすと推測される。そこで本研究では、ヒト培養ミュラー細胞を用いて、ブリモニジンによる神経保護効果を神経栄養因子の発現変化およびグリンパティックシステムについて検討することで、緑内障の新規治療法開発へ資することを目指す。 令和4年度の研究では、ヒト培養ミュラー細胞株であるMIO-M1にブリモニジンを添加することによって、神経成長因子(NGF)や脳由来神経栄養因子(BDNF)のmRNA発現が有意に上昇することが明らかとなった。またMIO-M1にブリモニジンを添加して、グリンパティックシステムで特に重要なアクアポリン4のmRNAを調べたところ、高濃度のブリモニジン添加により有意な発現上昇を認める一方で、内在コントロール遺伝子として用いたβ-アクチンのmRNA発現減少による影響が明らかとなり、適切な内在コントロール遺伝子による補正の必要性が判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した研究計画の中において、前半部分に相当する神経栄養因子の発現変化やアクアポリンファミリーの一つであるアクアポリン4の発現変化において研究成果が得られており、おおむね順調な推移であると自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は神経栄養因子の発現変化をウエスタンブロット等を用いてタンパクレベルで調べ、アクアポリン4のmRNA発現変化に関してはGAPDHを含む複数の内在コントロール遺伝子を用いて検証する。加えて研究計画に従い、アクアポリン1, 9といった他のアクアポリンファミリー遺伝子に関しても追加の検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由: 令和4年度予算は主としてRT-qPCRを用いたmRNA発現解析に用いられたため、低コストの実験系が主体となったことから、想定より低額となった。 使用計画:令和5年度にウエスタンブロットを用いたタンパクレベルでの解析を行う予定である。それに際して適切な抗体などを購入必要があり、比較的高額な試薬を複数用いることになるため、令和4年度に用いなかった予算によって補う予定である。
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