研究課題/領域番号 |
22K09807
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
本庄 恵 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (60399350)
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研究分担者 |
相原 一 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80222462)
木村 麗子 (山岸麗子) 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (80704642)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 緑内障 / 眼圧 / 生理活性脂質 / 線維柱帯 / 前房水 / サイトカイン |
研究実績の概要 |
緑内障眼での眼圧上昇は主流出路流出抵抗増大によるとされ、隅角線維柱帯(TM)の線維化、細胞外マトリックス(ECM)の異常沈着、バリア機能亢進等に房水中の生理活性物質の関与が指摘されている。 研究者らはこれまでの研究で、特に房水中のサイトカインのなかでも、開放隅角緑内障(POAG)での房水中高値が報告されているTGFβ2が非常な眼圧高値を示す続発緑内障(SOAG)や落屑症候群(XFG)といった病型では低値であることから、線維化に関与するリゾフォスファチジン酸(LPA)と産生酵素オートタキシン(ATX)に着目し、緑内障眼でLPA、ATXが有意に上昇、特にSOAG、XFGで高値、眼圧と有意な相関を示すことを見出した。また、ヒト隅角組織および培養ヒト線維柱帯細胞(HTMC)の解析から、緑内障眼でTMにATXの発現上昇がみられ、ステロイド刺激によるHTMCでのATX発現上昇が線維化に関与していることを明らかにした。 本研究の目的である各緑内障病型におけるATXとTGFβのバランスについての検討として、TGFβ2とATXのバランスが緑内障病型診断に有用であること、TGFβ2とATX間にクロストークがあることを報告した。昨年度はXFGで高値であるTGFβ3が濃度依存的にATXの発現に関与している可能性を報告し、HTMCの線維化にも関与していることを明らかにした。 本年度はATXを眼局所過剰発現することで、有意な眼圧上昇および隅角線維化、網膜神経節細胞障害をきたす緑内障モデルマウスの作成に成功し、報告することができた。今後さらにこのモデルマウスを用いて緑内障病態の検討を継続する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
房水解析、および培養細胞を用いた実験系でATX-LPAの眼圧上昇への関与についての解析を進めることができている。今後さらに作成できたモデルマウスなどを用いて病態についての検討を深める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
各緑内障病型におけるATXとTGFβのバランスについて、これまでにTGFβ2とATXのバランスが緑内障病型診断に有用であること、TGFβ2とATX間にクロストークがあることを報告した。ATXは特に続発緑内障病態で高値であり、XFGで高値であるTGFβ3についても、濃度依存的にATXの発現に関与している可能性を報告し、HTMCの線維化にも関与していることを明らかにしている。ATXを眼局所過剰発現による緑内障モデルマウスの作成に成功したことから、今後さらにこのモデルマウスを用いて、眼圧上昇時の眼内生理活性物質の動態、隅角線維化の進展と抑制の可能性の模索、そして病態制御による網膜神経節細胞障害の可能性について検討を継続する予定である。
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