研究課題/領域番号 |
22K09810
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
兼子 裕規 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (20647458)
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研究分担者 |
田中 寛 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60850899)
田崎 啓 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (80333326)
西川 義文 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 教授 (90431395)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 網膜フェロトーシス / Toxoplasma gondii / LA-ICP-MS / Malondialdehyde / GPx4 |
研究実績の概要 |
本研究では研究課題の核心をなす学術的「問い」として、ヒトの眼トキソプラズマ症やシリコーンオイル注入眼では網膜がFeを過剰に取込んでおり、これら疾患で見られる網膜障害にフェロトーシスが深く関与しているという仮説を立て研究を進めている。2022年度の研究によって、Toxoplasma gondii(T.gondii)感染ヒト眼球切片の網膜内からFeがLA-ICP-MS法によって検出された。またT.gondii感染後に眼球内投与した安定同位体Fe57がマウス網膜内に有意に多く検出された。Fe57は自然界に約2%しか存在しないことから、ここで検出されたFe57は人工的に硝子体投与したFeと判断できる。この実験結果から、感染後に硝子体液中Feが網膜内に有意に取り込まれることが確認された。このT.gondii感染マウス網膜における鉄関連遺伝子を調べたところ、Fe取込に関与するTfrcやDmt1、Fe蓄えに関与するFthやFtlが亢進し、Fe排出に関与するFpnが抑制されたいたことから、網膜がFeを取り込む遺伝子的な動きが観察された。また、脂質酸化のマーカーであるmalondialdehydeや4-hydroxynonenal(4-HNE)が亢進しており、Glutathione Peroxidase 4(GPx4)が低下していた。これらのことからT.gondii感染によって網膜のFe取込だけでなくフェロトーシスの関与が強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に提示した仮説であるT.gondii感染後の網膜内Fe取込とフェロトーシスの関与が示唆される実験結果が徐々に揃ってきており、仮説の証明が順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
網膜フェロトーシスという概念が新規制があり、これらの成果を研究論文として報告するには追加実験がまだまだ必要と考えられる。また網膜フェロトーシス概念にはFe抑制による治療効果も期待できるため、Feキレート剤の投与による治療の検証を行う必要がある。これらの実験成果も得られつつあるが、さらに確認実験や追加実験を行うことでより確信に近い結果とすることが求められる。
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次年度使用額が生じた理由 |
納入業者の在庫切れのため年度内に購入できなかった試薬があるため、次年度使用が生じた。 本年度に試薬購入目的で使用予定である。
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