研究課題/領域番号 |
22K09820
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
後藤 浩 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (10201500)
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研究分担者 |
杉本 昌弘 東京医科大学, 医学部, 教授 (30458963)
臼井 嘉彦 東京医科大学, 医学部, 准教授 (50408142)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 眼部悪性腫瘍 / ドラッグリポジショニング / オミックス解析 |
研究実績の概要 |
眼部悪性腫瘍は稀少疾患であるが故に、これまでもドラッグリポジショニングを試みた薬剤開発の試みは行われていない。本研究では各種眼部悪性腫瘍の生検検体および患者血清を用いて、様々なオミックス解析(プロテオミクス、メタボロミクス、トランスクリプトミクス)を行い、データベースと臨床情報を統合し、人工知能によって解析する。既知の薬物・標的タンパク質相互作用を予測するための人工知能の手法を応用し、in vitroの解析により安全性と有効性を確認し、眼部悪性腫瘍に対する新規治療薬の開発ならびに個別化医療を目指した臨床応用の基礎を築くことを目的とする。 オミックス情報から疾患関連遺伝子と治療薬標的遺伝子(ターゲット)、および疾患を構成する高次元ネットワークを、異なるオミックスデータ間の横断的解析を通じて探索する。ドラッグリポジショニング候補として適切な疾患と治療薬の組み合わせを同定する新しい創薬手法の開発と、眼部悪性腫瘍への適応を目指す。ドライ研究とウェット研究を融合し、眼部悪性腫瘍治療のための臨床試験に有望な治療薬を同定する。本年度は、眼部悪性腫瘍の中でも眼内リンパ腫で得られた生検検体のオミックス解析を行った。プロテオミクスとメタボロミクスのトランスオミックス解析の結果、代謝経路のうち、抗腫瘍免疫に関連するポリアミン代謝と、細胞増殖に重要な役割を持つプリン代謝におけるアデノシンからイノシンに異化する反応が亢進していた。プロテオーム解析を統合した結果、代謝酵素であるSMS(スペルミンシンターゼ)、ADA(アデノシンデアミナーゼ)に関連する蛋白の発現が上昇していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍によって試薬納入の遅れや、様々な眼腫瘍に対する薬物の抗がん作用を確認するための眼部悪性腫瘍細胞株が作成できていない。
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今後の研究の推進方策 |
各種眼部悪性腫瘍の生検検体と末梢血を用いて、プロテオーム、トランスクリプトームとメタボロームの網羅的解析を質量分析装置と次世代シークエンサーを用いて解析を行い、薬物、遺伝子、タンパク、疾患に関する様々な情報は、インターネット、文献、公共データベース(KEGG、DrugBank、MATADOR、ChEMBL、Binding Database、TTD、PubChem、SIDER、FAERS、STITCHなど)に分散して存在するため、それらを適時収集し、データを情報解析可能な形として整備する。特に薬物の標的分子やオフターゲットの情報はDrug BankデータベースやSTITCHデータベースから得る。タンパク質のパスウェイ情報はKEGGデータベースから取得し、ネットワークを基盤としたドラッグリポジショニングを行う。 得られたデータをもとに、薬物の情報(副作用報告、薬物応答遺伝子発現変化、標的タンパク質など)と疾患の情報(病因遺伝子、環境因子、バイオマーカなど)を融合し、薬物・疾患ペアの特徴をプロファイルで表す。種々のヒト由来眼腫瘍細胞株を用いたin vitroの実験により、インシリコ予測した既承認薬の抗がん作用の妥当性を確認する。さらにインシリコで分子記述子と活性の定量的な関係を数理モデルで記述し、構造活性相関を調べることによって新たな薬理効果を有する既承認医薬品をスクリーニングする。具体的な薬剤の候補については薬物に関する化学的な情報、薬理作用、化合物・タンパク質間相互作用情報、疾患に関するパスウェイ情報、病因遺伝子情報、環境因子情報、診断バイオマーカー情報などの医薬ビッグデータを融合解析し、薬物の新規効能を予測するためのインシリコ手法の開発を行う。その結果、複数の生物学的考察をもとにin vitroで検証するための薬物を選択し、クロスバリデーションなどの計算上のシミュレーションで性能評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により試薬などの納入が遅れてしまったため次年度使用が生じた。今後もオミックス解析や細胞株作成のための試薬の購入に使用していく。
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