研究課題/領域番号 |
22K09826
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
万代 道子 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 客員研究員 (80263086)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 網膜オルガノイド / 網膜変性 / 再生医療 / 移植 / 水平細胞 / 多電極アレイ |
研究実績の概要 |
シナプスマーカーがラベルされたマウスES細胞由来網膜オルガノイドを、双極細胞がGFPを発現する網膜色素変性マウスに移植し、蛍光標識によりシナプスの存在が確認される部位を同定しCorrelative light and electron microscopy (CLEM)技術を用いて電子顕微鏡による観察を行なったところ、ホスト双極細胞、グラフト視細胞、水平細胞が寄与した典型的なtriadシナプスが確認されるとともに、水平細胞のないシナプスや陥入が不十分な未熟と思われるシナプス構造などが観察され、移植後にはさまざまな状態のホストグラフトシナプスが形成されていることが観察された。また、この時にtriad視細胞シナプスに寄与している水平細胞については、移植組織内にも水平細胞が存在し、免疫組織学的観察により、ホスト側、または移植組織側、いずれの水平細胞もtriadシナプスに寄与しうる状態であることが示唆された。次にタモキシフェン投与により水平細胞が選択的にDTA毒性で変性するマウス(dHC)と視細胞変性マウス(rd1)を掛け合わせたマウスを用意して、dHC/rd1マウスと通常のrd1マウスに網膜オルガノイドを移植し、いずれにおいても移植片がシナプスを形成して生着し、視細胞が成熟、ホスト神経節細胞が光応答を示すことを観察した。これらのホスト網膜での水平細胞有無によるグラフト視細胞の機能的生着の違いを調べるために、さらに効率的にホストグラフト間のシナプス形数が行えるよう画像解析プロトコルを更新し、解析を進めている。またより詳細に水平細胞の寄与を考慮した移植後の視機能の違いを評価できるように、コントラスト感度の計測や、時間的、空間的解像度のを調べるための、現在多電極アレイ(MEA)システムの光刺激システムを更新中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電鍵観察についてはデータ解析がほぼ終わり、今後論文にまとめる予定である。水平細胞の関与に関する実験では、安定的に水平細胞欠失型の網膜変性マウスが得られるようになり、定期的な移植実験実施が可能となった。また、実際水平細胞欠失型での網膜変性マウスにおいても移植後の移植組織の生着と成熟、及び多電極アレイを用いた機能評価が可能であったため、今後は予定通りに水平細胞欠失を誘導していない通常の視細胞変性マウスへの移植との組織学的、電気生理学的比較を行なっていく。組織学的比較については客観的に複数サンプルでの解析に対応できるよう、これまでのシナプス計数プロトコルをさらに改良して効率よく計数できる目処がついてきた。また、多電極アレイについても、光刺激の出力やパターン刺激提示などのセットアップが順調に進んでおり、コントラスト感度、フリッカー光への追従、受容野の測定などが野生型マウス網膜において試験的に記録できるようになっており、今後予定通りホストの水平細胞有無によりどのような違いが生じるかを検証していく。
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今後の研究の推進方策 |
マウスの準備及び移植後解析についてはほぼ準備ができてきたため、今後は計画に沿って水平細胞欠失型視細胞変性マウスと通常の視細胞変性マウスにおいて、移植後のシナプス形成や、光応答がどのように異なるか、ホスト水平細胞の有無が機能的生着の違いに与える影響があるのか、をサンプル数を増やして検証していく。また移植後時間的空間的解像度の測定形に関しては、今後移植組織や移植条件を検討していく上で、より良い移植組織や移植方法を選んでいくための重要なパラメーターの一つとして利用できる可能性が大きく、その視点からも本研究内で、刺激システムや解析システムを汎用性のある形で構築していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入希望物品の手配ができず、次年度に購入予定であるため。
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