研究課題/領域番号 |
22K09827
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
石川 誠 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (10212854)
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研究分担者 |
佐藤 孝太 東北大学, 医学系研究科, 助教 (50732327)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 緑内障 / 眼圧上昇 / ミクログリア / 網膜神経節細胞 / 神経保護効果 |
研究実績の概要 |
緑内障の本態は網膜神経節細胞(RGC)の傷害であり,眼圧上昇は緑内障の発症・悪化の最も重要な危険因子である。しかし,眼圧上昇によるRGC傷害の機序は十分に解明されていない。 近年,眼圧上昇時に活性化されるミクログリアの働きが注目されている。眼圧上昇によって誘導されるミクログリアはRGC傷害性に働き、ミノマイシンによってミクログリアを抑制するとRGC傷害は抑制されるとの報告がある。しかし、ミクログリアによるRGC傷害の詳細なメカニズムは解明されていない。アルツハイマー病動物実験モデルの脳において、Toll様受容体4(TLR4)を介して誘導されるNLRP3 inflammasomeが神経細胞を障害することから, RGCの傷害においてもNLRP3 inflammasomeが重要な役割を果たすと考えられている。 申請者らは,「眼圧上昇によって細胞内から放出されたATPはミクログリアの P2X7受容体に結合して, TLR4を介して生成されるNLRP3 inflammasome を効率的に活性化する」との作業仮説をたて,ラットex vivoおよびin vivo緑内障モデルを用いて仮説を検証する。最初のDNAマイクロアレイによって、眼圧上昇によって変動する遺伝子を網羅的に解析して、活性化される炎症・免疫系の遺伝子パスウェイを同定する。さらに,網膜フラットマウント標本において、 眼圧上昇によるミクログリアの増生を確認する。TLR4リガンドであるリポ多糖とsynucleinを投与して,ミクログリアによるRGC傷害の機序を調査すると同時に、TLR4拮抗薬を作用した場合の神経保護効果も調査する。NLRP3 inflammasomeを創薬ターゲットとして,新しい機序を持つ緑内障神経保護薬の臨床開発に向けたエビデンスの構築を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①眼圧上昇によるミクログリアの活性化の検討:眼圧上昇によってミクログリアが活性化することを明らかにするため,ex vivo眼杯標本を閉鎖型加圧装置を用いて10 mmHgおよび75 mmHgで24時間加圧した。その後,網膜伸展標本と凍結切片を作製し,ミクログリア活性化マーカー (抗Iba-1抗体)による免疫組織染色を行った。その結果、Iba-1陽性ミクログリアは75 mmHgにおいて10 mmHgと比較して明らかな分布密度の上昇を示した。 ②NLRP3 inflammasome関連タンパク質の眼圧上昇による発現上昇の検討:活性化したミクログリアにおけるNLRP3インフラマゾーム炎症反応の活性化を明らかにするため,NLRP3,Pro-IL 1β,IL-1βの眼圧上昇による発現上昇を,Western blotting法によって解析した結果,いずれのタンパク質も75 mmHgの加圧によって発現が上昇した。 ③DNAマイクロアレイによる遺伝子発現の検討:10 mmHgと75 mmHgで加圧したex vivo眼杯標本をDNAマイクロアレイで解析した結果、75 mmHgの加圧によってTLR関連炎症反応に関わる経路の発現が最も強く増強された。TLR4は,NLRP3インフラマゾーム炎症反応の上流に位置する受容体である。 ④加圧による網膜神経節細胞(RGC)の変化:ex vivo網膜標本を75 mmHgで加圧すると、RGCの分布密度は10 mmHgと比較して有意に減少する。TLR4拮抗薬を作用させると,75 mmHgにおけるRGCの分布密度は、TLR4拮抗薬を作用させない場合に比較して有意に上昇する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、TLR4拮抗薬のNLRP3インフラマゾーム関連タンパク質であるNLRP3,Pro-IL 1β,IL-1βの発現をWestern blotting法によって解析し、TLR4拮抗薬の神経保護効果のメカニズムを解明する。さらに、ラット前房内マイクロビーズ注入法によって緑内障動物実感モデルを作製して、ミクログリアとNLRP3インフラマゾーム炎症反応の変化を解析する。
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