研究課題/領域番号 |
22K09831
|
研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
上野 真治 弘前大学, 医学研究科, 教授 (80528670)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | NIID / NOTCH2NLC / 網膜変性 |
研究実績の概要 |
NOTCH2NLC 遺伝子のGGC リピート配列の延長がみられたNIID患者の網膜所見を検討した。7名のNIID患者のうち2名に著明な網膜変性がみられ視力障害を呈していた。一人は網膜色素変性、もう一人は黄斑ジストロフィと診断されていた。これらの患者の一つの特徴として、通常の網膜色素変性や黄斑ジストロフィよりも進行が早いこと、また黄斑が比較的障害されやすいという特徴があり、通常の遺伝性網膜変性疾患などとは病態が異なると考えられた。他の眼症状のない患者もすべての患者でERGでの何らかの網膜の機能低下が疑われ、網膜断層像でも異常が見られた。ERGでは杆体系の反応が特に障害されており、網膜断層像では視細胞だけでなく網膜の中層の菲薄化がみられる症例もあった。これらのことはNOTCH2NLC 遺伝子のGGC リピート配列が、自覚症状を伴っていなくても、網膜においても変性や機能低下を起こすこと示唆していた。 また共同研究者の曽根らのNIID患者の一人の剖検から網膜の核内封入体の病態を解明した。今までの報告では、核内封入体は網膜の一部の層に見られるとされていたが、今回の検討では核内封入体は網膜のすべての層に加え視神経乳頭のグリア細胞にも見られた。網膜の神経節細胞、内顆粒層、外顆粒層、網膜色素上皮を含むいずれの層でも、細胞の15%から25%程度の核が核内封入体を発現していた。このことは、NIIDが網膜の全層の細胞に影響を与えており、網膜色素変性のような視細胞変性だけでなく、視神経萎縮なども起こす可能性が考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究責任者の上野が6月から弘前大学に異動になり、遺伝性網膜疾患の患者の血液採集がまだ進んでいない。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続きNIID患者の網膜所見の検討を行い、網膜ジストロフィ患者の中にNOTCH2NLC 遺伝子のGGC リピート配列がどの程度みられるか検討する
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響で出張費が予定よりやや少なくなったため、約19000円余剰となった。2023年度に繰り越して、遺伝子検査の費用として使用する。
|