研究課題/領域番号 |
22K09835
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
近間 泰一郎 広島大学, 医系科学研究科(医), 准教授 (00263765)
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研究分担者 |
高 知愛 広島大学, 医系科学研究科(医), 准教授 (70314797)
末岡 健太郎 広島大学, 医系科学研究科(医), 寄附講座助教 (20868228)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 光線力学的抗微生物化学療法 / 薬剤耐性 / 角膜感染症 / 半導体レーザー / パルス照射 / コンタクトレンズ消毒 |
研究実績の概要 |
本研究は、光線力学的抗微生物化学療法(photodynamic antimicrobial chemotherapy: PACT)を用いた、抗微生物薬に頼らない新たな角膜感染症治療法の確立が究極の目的である。角膜感染症モデルを用いたin vivo PACT研究を継続して行い、その有効性と実用性についての検証を続ける。具体的には、従来使用してきているLED照射とパルス半導体レーザー照射の相違点の検証を行い、より有用で安全な照射方法の確立を目指す。また、ソフトコンタクトレンズ(SCL)の消毒における本PACTの有用性と安全性についての研究も並行して行うことで、PACTの拡張性や日常生活での汎用性の向上も考慮した研究を推進する。 光感受性物質はこれまで継続して使用してきた新規の水溶性カチオン性クロリン誘導体TONS504を、光照射装置は新規のパルスモード付き半導体レーザーを用いた。パルスモードを使用することにより、抗微生物効果はLED照射と同様で、培養液の温度上昇を抑えることができた。また、S. aureusとP. aeruginosaに対する界面活性剤の塩化ベンザルコニウム(BAC)またはキレート剤のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)添加によるTONS504-PACTの抗微生物効果の増強を、C. albicansにおいても評価し、BACのみ相乗効果があった。この結果から、菌種によって望ましい補助薬剤が異なることがわかった。 さらに、新規角膜感染症治療の汎用性、拡張性において、SCLの消毒効果におけるTONS504-PACTの有用性を検討した。S. aureusに対してはCL上においても有効だった。一方、P. aeruginosaに対しては現在の条件下では、CL上では抗微生物効果はなかった。現在、条件を確認中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度に計画予定していたソフトコンタクトレンズの消毒効果の検討を先行して行った。各種病原微生物の培養液中でインキュベートしたソフトコンタクトレンズに対してPACTを行い、その抗微生物効果を検討中である。 S. aureusに対してはCL上においても有効だった。一方、P. aeruginosaに対しては現在の条件下では、CL上では抗微生物効果はなかった。現在、条件を確認中である。 一方で、家兎黄色ブドウ球菌角膜感染モデルを作製し、BAC添加TONS504-PACTの効果を検討したが、in vivoにおいては未だ有効性は確認できていない。さらなる条件の探索が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
In vitro研究は現在進行中の、ソフトコンタクトレンズの消毒効果の検討異なる照射装置による抗微生物効果の検討を継続し、条件の最適化を目指す。 また、in vivo家兎黄色ブドウ球菌角膜感染モデルにおけるTONS504-PACTの最適な条件の探索を引き続き行う。 BACならびにEDTA添加による相乗効果については、論文投稿を済ませており、新規光照射装置(パルスモード付き半導体レーザー)の有用性に関しては、投稿の予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)令和5年度に計画予定していたソフトコンタクトレンズの消毒効果の検討を先行して行った結果、in vitroの研究であったため研究費の予算執行が予定よりも低額となった。 (計画)本年度十分な結果が得られていないin vivoの研究に必要な動物の購入並び飼育費等の購入費に充てる予定である。
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