研究課題/領域番号 |
22K09836
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
山田 直之 山口大学, 大学院医学系研究科, 講師 (70437630)
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研究分担者 |
芦森 温茂 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (60870459)
木村 和博 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (60335255)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | TGFBI |
研究実績の概要 |
角膜ジストロフィは遺伝性であり、両眼性に角膜混濁(沈着)を生じ徐々に視力低下をきたす疾患である。角膜に沈着する物質はすべて解明されているわけではないが、遺伝子変異により産生された異常な蛋白質が沈着物形成に寄与している。重症例では角膜混濁は著明であり視力低下も著しい。 現状、角膜移植や治療的レーザー角膜除去術などの対症療法が主な治療であり、長期的には再発は必発である。それ故、遺伝学的知見に基づいた発症機序の解明、新たな治療法や予防法の開発が求められている。 TGFBI遺伝子は角膜ジストロフィの代表的な原因遺伝子であるが、遺伝子変異の違いによって角膜における表現型が多様であることが知られている。TGFBI蛋白質は、分泌型細胞外基質としての作用を有し、細胞外から細胞内へ情報を伝えるout-in signal機能を有していると思われる。本研究では、細胞外に分泌されたTGFBIの生理活性に着目し、TGFBI関連角膜ジストロフィにおける表現型を規定する分子機序を解明することを目的としている。 現在、我々はヒトTGFBIのcDNAをクローニングし、in vitroでの培養細胞である角膜上皮細胞を用いてその発現を確認した。さらに、機能ドメインに着目し、種々の変異体を有する発現ベクターを作成し、その発現を確認した。現在、いくつかの変異体において、培養角膜上皮細胞にて、細胞骨格異常や形態異常を認めており今後さらなる解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、角膜ジストロフィ症例においてTGFBI遺伝子変異における表現型の多様性を解明するため、TGFBI遺伝子の遺伝子産物TGFBI 蛋白質の細胞外基質としての機能と細胞外からのout-in signalの分子メカニズムを明らかにする。我々はwild type TGFBI遺伝子のcDNAクローニングを行い、mammalianでの発現ベクター構築を終えている。さらに、ヒトでの角膜ジストロフィーの表現型の違いに起因すると思われるTGFBI遺伝子R124H変異およびL527R変異も現在作成中であり、特異的な変異体を作成する前に本来のTGFBIの機能を評価する必要もあり、機能ドメインを欠損させた十数種類の変異体を現在作成し、角膜上皮細胞にてその発現を確認できている。いくつかの変異体にて、アクチン細胞骨格の異常や細胞形態の異常を呈する表現型を確認できており、今後さらに解析を進める予定である。さらに、大量発現系の構築のため、全長のTGFBIを含んだ発現ベクターの安定発現株の選定を行っている。HEK293細胞およびCHO細胞を使用して、stable lineのクローニングを今行っている。
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今後の研究の推進方策 |
角膜ジストロフィにおいて、TGFBI単一遺伝子における遺伝子変異の多様性においてこのような表現型の違いを生み出すには、一つの原因として遺伝子変異のもと作り出される各々の変異を有するTGFBI蛋白質が細胞、組織に影響を与えていると考えられる。実際、我々が作成したいくつかのTGFBIの変異体を用いて。培養角膜上皮細胞で強発現させた場合、preliminaryではあるが、細胞膜の形態異常やアクチン細胞骨格異常を呈することが明らかとなっている。これらをさらに詳細に検討するとともに、機能ドメインを介したさらなる制御機構を解明する。細胞外に分泌された各々のTGFBI蛋白質による正常な角膜上皮細胞への細胞増殖、細胞接着、細胞周期などの細胞高次機能の評価を確立した大量培養系から得たリコンビナント蛋白質を用いて検討する予定である。さらに、ヒトでの角膜ジストロフィの表現型の違いに起因すると思われるTGFBI遺伝子R124H変異およびL527R変異を有するTGFBI発現ベクターの作成を急ぎ、培養角膜上皮細胞で強発現させた場合のその表現型について詳細に解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の実験内容に変更はなかったが,当初予定していた実験試薬の変更により未使用額が生じた。この未使用額については,令和5年度の実験試薬の購入に充てる。
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