研究課題
ぶどう膜炎は視力障害の主要な原因疾患の1つであるが、診断や治療効果判定に確立したバイオマーカーや治療法は未だない。様々な種類のぶどう膜炎において単一マーカーでの診断には限界があり、ぶどう膜炎の多様性を正確に評価した個々の特徴と治療方針が重要となる。本研究では、眼内液と低侵襲に採取可能な体液(血液や唾液)でみられるオミックス解析をプロファイリングし、人工知能(機械学習)によりそのパターンの解析を行う。さらに臨床情報も加味して統合的な疾患評価の数理モデルの開発を行い、人工知能とオミックス解析を用いたぶどう膜炎の新規診断方法の開発を目的とした。ぶどう膜炎の中でも眼内リンパ腫は中枢神経系病変を合併すると予後不良となることが多いため、発症早期における確実な診断が重要である。眼内リンパ腫症例の硝子体を用いて水溶性代謝物のメタボローム解析とプロテオーム解析を行い、バイオマーカーの探索を行った。メタボローム解析では2回の測定で計91種類、76種類の水溶性代謝物を同定、定量することができた。代謝物の変化としては初回測定で28種類、追加測定で29種類の代謝物で有意差が確認された(p<0.05)。代謝経路のうち、抗腫瘍免疫に関連するポリアミン代謝と、細胞増殖に重要な役割を持つプリン代謝におけるアデノシンからイノシンに異化する反応が亢進していた。プロテオーム解析を統合した結果、代謝酵素であるSMS(スペルミンシンターゼ)、ADA(アデノシンデアミナーゼ)に関連する蛋白の発現が上昇していた。そのため、眼内リンパ腫の硝子体におけるプロテオミクスと代謝物を網羅的に解析することによって、バイオマーカーの新規発見につながる可能性がある。
2: おおむね順調に進展している
25報の査読付きの英語論文に成果を発表することができたため。
引き続き、多くのぶどう膜炎やその類縁疾患について、患者オミックス情報と臨床情報を人工知能により統合解析することによるぶどう膜炎診断の確立を目指す。特に疾患の高次元性と潜在的ヘテロ性による解決の困難性の克服するため、主要な機械学習を用いて、多階層・時間軸で解析し、疾患予測のアルゴリズムを作成する。
研究はおおむね順調に進展したが、残額は次年度に消耗品の購入を予定する
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件)
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