研究課題/領域番号 |
22K09843
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
北岡 康史 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (10367352)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | オートファジー / 緑内障 / 軸索保護 / 軸索再生 / P70S6K / Raptor / ROCK阻害剤 / Nicotinamide |
研究実績の概要 |
視神経軸索保護に向かう経路にオートファジー活性化が存在するが、オートファジー活性化でよく知られているmTOR inhibitorは軸索再生を抑制することが報告されている。本研究ではオートファジーを活性化し、かつmTORに影響を与えない経路の探索を目的にしている。これまでにROCK inhibitorであるネタルスジルがオートファジーを活性化し、軸索保護作用を発揮することを報告したが、本研究ではさらにネタルスジルがmTORに影響を及ぼすか検討した。mTOR complexにはRaptorが含まれており、その下流にP70S6Kが存在する。そこで、TNF硝子体注射モデルを用いて、ネタルスジルのこれら因子に及ぼす影響を検討した。これら因子はリン酸化で活性化するのでそれぞれリン酸化P70S6Kとリン酸化Raptorの発現を視神経をサンプルにウェスタンブロットを行った。まずコントロール群に比してネタルスジル単独硝子体注射群ではリン酸化P70S6Kは変化を認めなかった。さらにTNF群と比較してTNF+ネタルスジル同時投与群ではリン酸化P70S6Kの有意な変化を認めなかった。次にraptorに関してはコントロール群に比してネタルスジル単独群でリン酸化raptorは変化を認めなかった。以上によりネタルスジルはオートファジー活性を活性化し軸索保護効果を示すが、mTOR関係には影響を与えず、つまり軸索再生には負の影響を認めない可能性を示した。さらにAMPK経路の関与も示唆され、AMPK活性剤でもオートファジーは活性化される。今後これらのmTORへの影響や、nicotinamideのAMPKへの影響などを検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記成果を2022年12月日本臨床薬理学会で発表した。また2022年9月の日本緑内障学会ではオートファゴソームが視神経軸索輸送中にも発生する可能性を電子顕微鏡所見を示して提示した。
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今後の研究の推進方策 |
ROCK阻害剤以外にもオートファジーを活性化し、mTORに影響を及ぼさない経路を考えている。Nicotinamide ribosideを内服投与し、オートファジー関連因子を探求している。高眼圧モデルではNicotinamide riboside内服で有意な軸索保護効果を確認しており、今後視神経や網膜での関連因子を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
抗体や試薬は研究室のストックのものを使用し、節約でき、実験動物も大学院生の別の費用を使用することで、節約できた。次年度は実験動物や様々なアッセイに使用予定である。
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