研究課題/領域番号 |
22K09845
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研究機関 | 大阪医科薬科大学 |
研究代表者 |
奥 英弘 大阪医科薬科大学, 医学部, 教授 (90177163)
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研究分担者 |
高井 真司 大阪医科薬科大学, 医学研究科, 教授 (80288703)
喜田 照代 大阪医科薬科大学, 医学部, 教授 (90610105)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | tau / LiCl / GSK3β / タウオパチー / 視神経傷害 / 網膜神経節細胞 |
研究実績の概要 |
視神経傷害により生じる逆行性軸索変性と網膜神経節細胞死に、tauopathyが関与していることを明らかにした。tauopathyはtauの異常なリン酸化により、tau oligomerが形成され生じると考えられている。視神経傷害により惹起されるtauのリン酸化に、GSK3βが関与している可能性につき検討した。視神経傷害後に生じるGSK3β発現変化を免疫組織科学的に検討した。網膜神経節細胞をTuj1で標識し、網膜神経節細胞レベルでのGSK3βの発現を共焦点レーザー顕微鏡で観察した。その結果、網膜神経節細胞は経時的に減少するが、GSK3βの発現は亢進するのが観察された。特にTuj-1の染色性が低下し網膜神経節細胞が変性過程にある細胞で、GSK3βの発現が亢進しており、GSK3βが網膜神経節細胞死に関与していると考えられた。次いでday 7にGSK3βとtauの発現を二重染色で検討したところ、GSK3βとtauは共発現していることが確認された。 GSK3β阻害剤であるLiClを硝子体中に投与し、day 3で網膜を摘出し、immunoblotでタウタンパクの発現変化を検討した。リン酸化タウの発現は、視神経傷害でcontrolの2.4倍に有意に増加したが、LiCl投与群ではcontrolの1.4倍にとどまり、GSK3βは視神経傷害後に生じるタウタンパクのリン酸化に関与していると考えられた。 視神経傷害後day7に網膜伸展標本を作製し、Tuj-1染色で網膜神経節細胞を標識し、LiClによる神経保護作用を検討した。網膜神経節細胞密度は、LiCl投与群で有意に温存され、LiClにより神経保護作用が確認された。これらの結果から、視神経傷害後の網膜神経節細胞死をもたらすtauopathyに、GSK3βが関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
視神経傷害後に、GSK3βの発現が亢進し、免疫組織学的にtauと共発現がみられたこと、またLiClによりGSK3βを抑制するとリン酸化タウの発現が減少し、網膜神経節細胞に対して神経保護作用が認められた。これらの所見から、視神経傷害後に生じるtauopathyにGSK3βが関与している可能性が強く示唆される結果が得られている。 タウオパチーの原因はtau oligomerの蓄積が原因とされ、tauの重合にリン酸化過程が重要な役割を果たしていると考えられている。tau oligomerの増加をimmunoblotで確認すること、またその増加がGSK3βの抑制でもたらされることなどを確認する必要がある。様々な部位でtauのリン酸化が生じることが知られているが、immunoblotでそれぞれ検討するには、条件検討を含めて多くのタンパクが必要となり、動物数も増加する。ELISAのキットも開発されており、ELISAも利用して研究を継続していく。
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今後の研究の推進方策 |
GSK3βのほかに、CDK5がtauのリン酸化に関与していると考えられているが、両者の関連については十分に明らかにされていない。両遺伝子が相互的に作用してtauのリン酸化を促進し、tau oligomerの形成に関与していると考えられている。calpainは両者の活性化に共通して作用している可能性があるproteaseである。申請者はcalpain阻害でリン酸化タウの発現減少を確認している。この観点から、calpain阻害によるGSK3β、CDK5活性の変化などを検討し、GSK3β、CDK5の相互作用についても検討を加えていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
immunoblotによるリン酸化タウの発現変化の検討に、simple western systemの利用を計画している。そのために、次年度使用額が生じている。
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