応募者は、国立成育医療研究センター眼科で診療活動を行い、多様な難治性眼疾患に遭遇する機会が多い。周期性斜視とは、斜視の日と斜視のない日が周期的に交代する特殊な斜視であり、原因は不明である。48時間もしくは24時間周期が次第に崩れて恒常性となり、手術治療を契機に斜視が軽快するがその機序も明らかでない。応募者は、本疾患の原因は遺伝的要因が関与すると考えている。本研究では、特殊な斜視である「周期性斜視」の遺伝的要因の同定を目的とした。これまでに周期性斜視8例の臨床経過を解析し、うち周期性内斜視5歳女児と周期性外斜視10歳女児の2例のゲノム解析を行い、エクソン領域に点変異を見出している。本点変異を有する遺伝子産物Xは、ヒト統合失調症に関与すること、細胞骨格を制御する因子であること、時計遺伝子産物の発現制御に関与することが報告されている。本年度は、課題1の結果をさらに深めるために、野生型Xと変異Xを動物細胞に発現し、これらの生化学的特性の検討を行った。その結果、各種の細胞応答に重要な役割を果たすイノシトールリン脂質に対する結合能が両者で異なることを見出した。また、課題2の小型魚類を用いた解析を行うためのモルフォリノ設計や課題1で作製した野生型および変異遺伝子Xをコードする cDNAを鋳型にしてそれぞれのmRNAを調製した。受精卵に導入する準備が整った。以上のように、候補遺伝子の生化学特性を見出したので、研究は順調に進展していると考える。
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