研究課題/領域番号 |
22K09856
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
中川 雅裕 浜松医科大学, 医学部附属病院, 特任教授 (00285793)
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研究分担者 |
内藤 康秀 光産業創成大学院大学, 光産業創成研究科, 准教授 (40237186)
沖原 伸一朗 光産業創成大学院大学, 光産業創成研究科, 准教授 (50410535)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 微小血管吻合 / レーザー / 血管吻合 / 金属ステント / マイクロサージャリー |
研究実績の概要 |
顕微鏡下微小血管吻合(マイクロサージャリー)において、金属ステントとファイバーレーザー(以下レーザー)を用いて動脈と静脈の両方共に吻合できる自動血管吻合器の開発を行うのが目的である。 2022年度は①手術用顕微鏡装着型血管吻合用レーザーヘッドの開発、②血管吻合用金属ステントの開発、③ウサギの血管における金属ステントとレーザーによる血管吻合、を行った。 2023年度は①手術用顕微鏡装着型血管吻合用レーザーヘッドの改良②ラットを用いた微小血管吻合の動物実験③金属ステントの改良と微小血管吻合法の検討、を行った。①手術用顕微鏡装着型血管吻合用レーザーヘッドの改良では、レーザースポット径が1000μmと血管の幅に対して大きかったため、発振器の改良やレンズ・ミラーの変更等で200μmと狭小化ができた。②ラットを用いた微小血管吻合では、3匹のラットに対して全身麻酔下に両側の大腿動脈を露出し、左側は従来法である針糸を用いた血管吻合を行ない、右側は金属ステントとレーザー(レーザー法)による血管吻合を行った。1週間後に開創して血管吻合の開存を確認した。結果は、左側の従来法では2/3例(66.6%)が開存しているのに対し、右側のレーザー法では0/3例の(0%)の開存であった。これは金属に対する血液の反応により血液凝固を来したと考えれた。③微小血管吻合法の改良では②の結果を踏まえ、金属の面積が小さい網状のステントを作成した。網状のため吻合部から血液の漏出を来すため、漏出をシールドする医療材料を検討した。また、金属ステントを用いないレーザーのみによる微小血管吻合も検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
手術用顕微鏡装着型血管吻合用レーザーヘッドの開発とレーザーによる血管と金属ステントの溶着に関しては、当初の計画以上に進展した。しかし、ラットによる金属ステントとレーザーによる血管吻合後の血管開存が認められなかった。そのため、動物実験を縮小(20匹→3匹)して、金属ステントの改良を行っている。金属ステントは従来のパイプ状から、網状として、金属部分が血管内腔で血液と接する面積を減少させた。一方、金属ステントを網状としたことにより吻合部からの血液の漏出が問題となった。その対策として吻合部外側に血管の漏出部をシールドする医療材料等を検討した。特に体内で可溶性のさまざまな止血剤やコラーゲン素材の人工真皮、化学合成物であるカプロノラクトンなどを検討した。その中で人工真皮であるテルダーミスが癒合性や止血性を含めて最も優れていると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
現在、金属ステントを網状の構造に改良を行っており、前述したが、その血管吻合部からの血液漏出という問題点に対処している。また、金属ステントを用いず、血管内腔にバルーンを挿入し、レーザーで血管吻合を行う方法や、レーザーのみによる血管吻合も検討中である。レーザーのみによる血管吻合は、鶏から採取し、血流のない血管では可能であったが、吻合部は緊張に弱かった。動脈吻合においては、血流がある場合、血圧が高いため長期の耐久性の心配がある。そのため動脈の吻合部の補強法も検討している。今後は心拍性ポンプによる血液循環のシミュレーションを行い、血管内圧の変化による血管吻合部の耐久性を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、動物実験の縮小(20匹→3匹)があり、収支額が異なった。今年度、行えなかった動物実験に間しては、来年度行う予定である。
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