研究課題/領域番号 |
22K09868
|
研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
赤松 正 東海大学, 医学部, 教授 (10276850)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | エピテーゼ / 不気味の谷 / 視線機能 / モーションカメラ / 液晶 |
研究実績の概要 |
眼窩・眼瞼部エピテーゼの最大の問題点は見たものに与える不気味な印象である。不気味の谷として知られるこの現象を解決するため、本研究ではエピテーゼに眼球運動による視線の一致という表情機能の付与を試みる。エピテーゼ眼球に健側の眼球運動に同期した運動機能を付与する方法論として、本研究は眼鏡型フレームに内包した光学的読み取り装置と球面液晶パネルに描画される眼球を用いることを計画している。 【2022年度の研究の成果】1.眼鏡型フレームに内蔵した光学的読み取り装置の設計を行った。当初計画していた読み取りシステムはモーションカメラにより健側の瞳孔虹彩部を撮影し、その画像をPC上の画像認識ソフトウェアで解析・信号化したうえで、エピテーゼの液晶に画像出力すルもので、それについて設計と考察を行った。しかしPCによる解析を経由することで、時間的遅れが相当量発生することが分かった。現在遅れを最小現にする為処理方法を再検討中である。また、同時に瞬目により画像情報が途絶えている間、画像を保持し、開瞼後に再開する為のプログラムも検討中で、この開発にも時間を要している。当初これらは2022年度中で終了する予定であったが、本年度も研究を継続する必要がある。2.エピテーゼ作製のための実物大モデル作製を行った。モデル患者さんに本研究に協力することの同意を得たうえで、3D計測を行い、レジン製モデルを作製した。本モデル上で欠損スペースに適合する液晶製眼球の設計を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、読み取り装置の設計を22年度中に完成させる予定であったが、時間的遅れが予想以上に大きいことが判明し、その設計に時間をとられている。 研究計画では、2022年度には、1暗い状況での虹彩の検出性、2強い内外方視の際の虹彩の検出性、3被検眼球の瞬目時の信号の途切れの対策、について検討する予定であったが、 これを2023年に持ち越すこととなった。
|
今後の研究の推進方策 |
【本年度の研究計画】エピテーゼ側の運動機能を有する眼球の実現性を検討し開発を行う。1計画している曲面液晶パネルでの眼球の表現の自然さ、特に周囲環境の明暗に影響されない色彩の出力が可能か、2観察者側からみてエピテーゼの瞳孔と視線の合う感覚が表現されるか、その際に健側瞳孔と協同した両眼視の感覚が表現されるか、について検討を行う。局面液晶パネルはサンテック・ディスプレイ株式会社製フィルムTN液晶をベースにカスタムメイド製品の使用を予定している。コントラスト値は1:8以上で、透過性に非常に優れるので白色の結膜色の再現に適する。 【2024年度の研究計画】検出システムと液晶の画像制御システムの最適化を行い、自然な眼球運動と視線機能の再現を目指す。これにより最終的な審美性と不気味さについて評価を行う。被検者は研究代表者の施設で顔面悪性腫瘍切除後の再建を行い、その後眼窩部エピテーゼによる再建法を選択した患者から、研究に協力する同意を得た2名がすでにいるので、その被検者に眼球運動可能なエピテーゼを製作し装用してもらう。被検者となる患者の人権と個人情報保護の観点から、評価者は研究代表者の施設に所属する熟練した形成外科医5名とする。
これらについて予定どおり研究を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
エピテーゼ製作会社にモーションカメラによる画像解析システムの開発費を支払う計画であったが、まだソフトウエアの完成を見ないため、請求がない。また、実体モデル制作費は研究代表者の教室にモデル作製装置と3D計測カメラがあるため、これを私用して行ったため、本年度は費用がかからなかった。 研究計画に予想外の遅れはあるが、研究計画の中断はない。
|