研究課題/領域番号 |
22K09880
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
冨田 興一 近畿大学, 医学部, 教授 (90423178)
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研究分担者 |
大谷 直矢 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (00882268)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 水素 / 酸化ストレス / 難治性潰瘍 |
研究実績の概要 |
水素は組織の酸化ストレスを軽減する効果を持ち、多くの酸化ストレス関連疾患に有用であることが報告されている。しかし、従来の水素水や水素ガスを用いた投与法では、十分量の水素を継続的に組織へ供給することが困難であることが、水素の臨床応用上の課題であった。そこで、近年我々は、内服することで高用量の水素を持続的に体内で発生させる性質を持つシリコン製剤に着目し、その効能を検証する研究を行っている。 皮膚軟部組織においては、褥瘡や放射線皮膚炎・潰瘍等の疾患の発症や進行にも酸化ストレスが関与していることが報告されている。本研究では、これらの難治性潰瘍における水素の治療効果を、シリコン製剤とマウスを用いた動物実験を通して検証する。 まずは、皮膚圧迫損傷における潰瘍発症の抑制・治療効果を検証するため、マウスモデルでの検証を行った。 具体的な方法としては、2.5%シリコン製剤含有食餌を摂取させたマウスと、通常の食餌を摂取させたマウスにおいて、磁石を用いて背部に12時間の圧迫損傷を加えた。圧迫解除後の背部の潰瘍面積を経時的に評価することで、シリコン製剤の内服の有無による潰瘍の発症予防・治療効果を検証した。 シリコン製剤を摂食させた群のマウスでは、通常の食餌を摂食させた群のマウスと比較して、潰瘍の面積が有意に低下し、最終的な治癒までの期間も短縮するこ とが確認できた。この結果から、シリコン製剤の内服が圧迫損傷の予防・治療に有効であることが示唆された。現在、本マウスモデルから採取した皮膚組織を用いて、シリコン製剤の内服の有無による炎症サイトカインやアポトーシス関連タンパク、酸化ストレスマーカーの発現や組織学的な変化などの検証を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、背部圧迫損傷マウスモデルにおいて、シリコン製剤から発生する水素の潰瘍発症抑制効果を確認することができている。現在はマウスモデルから採取した皮膚組織を用いて、シリコン製剤の内服の有無による炎症サイトカインやアポトーシス関連タンパク、酸化ストレスマーカーの発現や組織学的な変化などの検証を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
現在取り組んでいる、シリコン製剤の内服の有無による炎症サイトカインやアポトーシス関連タンパク、酸化ストレスマーカーの発現や組織学的な変化などの検証が終わり次第、学会発表や論文発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に予定していた動物試料解析の一部が次年度に持ち越しとなったため次年度使用額が生じた。次年度に予定していた実験と合わせて遂行していく予定である。
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