研究課題/領域番号 |
22K09912
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
乾 賢 北海道大学, 歯学研究院, 准教授 (40324735)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 味覚 / 味覚嫌悪学習 / 視床下部 / 視床下部外側野 / 化学遺伝学的手法 / DREADD |
研究実績の概要 |
研究期間の前半では,前年度に引き続き,味覚嫌悪学習(CTA)の想起における視床下部外側野グルタミン酸性ニューロン(LH-Glu)の役割を調べる実験を継続した.LH-Gluに興奮性人工受容体hM3Dqあるいは抑制性人工受容体hM4Diを発現させたマウスにサッカリンをCS,塩化リチウムをUSとしたCTAを獲得させた.テストで実験群には人工リガンドであるdeschloroclozapine(DCZ;50 μg/kg)を投与し,対照群には溶媒(1%DMSO含有生理食塩水)を投与した.投与30分後にCSを呈示し,摂取行動と接近行動を分析した.高頻度リック(舐め行動)をBurstと定義した.また,摂取を伴う接近行動をEntry-Lickとし,伴わない場合をEntry-Stopと定義した. LH-Gluの活動亢進によってBurstの生起回数が増加する傾向にあったが,持続時間は変化しなかった.総摂取量に有意な変化はみとめられなかったが,最初の1分間のリック数が有意に多かった.また,Entry-LickとEntry-Stopの頻度と持続時間が増大した.一方,LH-Gluの活動抑制は変化を生じさせなかった.これらのことから,LH-Gluの活動がCTAの想起における摂取促進の側面に関与していることが示唆された. 期間の後半では,GABA作動性ニューロン(LH-GABA)の役割を用いて調べた.LH-GABAに抑制性人工受容体hM4Diを発現させてCTAの想起に及ぼす影響を調べたが,いずれの行動指標においても有意な変化はみとめられなかった.個体数が不十分(各群3匹)であるため,引き続き実験を行う必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
化学遺伝学的手法によってLH-GABAを任意のタイミングで操作するために,GABA作動性ニューロン特異的に外来遺伝子を導入することができるvgat-Creマウスを導入した.今年度途中の研究開始時期に間に合うように早めに動物を導入し,自家繁殖を開始した.しかし,1回の交配によって生まれる新生仔の数が当初の予想より少なく,また使用予定であった雄性マウスより雌性マウスの方が多く生まれる傾向にあり,行動実験に必要な個体数を揃えるまでに時間を要した.そのため,本年度終了時点で統計学的分析が可能な個体数(各群最低n=5)を得られておらず,当初の予定よりもやや遅れていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
現在は同時期に交配するペア数を増やし,繁殖効率を上げるとされるエンリッチメントを導入することで,一時に得られる新生仔の数を増やすことを目指す.それによって雄性マウスが得られる確率を上げる. 交配によって得られた雄性マウスを用いてこれまでと同様に,LH-GABAに抑制性人工受容体hM4Diを発現させ,LH-GABAの活動抑制がもたらす影響について調べる.その後,LH-GABAに興奮性人工受容体hM3Dqを発現させる実験を行い,LH-GABAがCTAの想起においてはたす役割を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
Vgat-Creマウスの繁殖が想定通りに進まず,実施した実験が予定より少なくなったために次年度使用が生じた.その費用は繁殖効率を上げるために導入するエンリッチメントの購入に充てる.また,同時期に交配するペア数を増やすことで,一時に得られる新生仔の数を増やすことを目指すが,その維持管理に必要な費用(消耗品,アルバイト雇用)に充てる. 交配によって十分な数のマウスが得られてから,従来の研究計画通りに,LHのGABA作動性ニューロン(LH-GABA)に抑制性人工受容体hM4Diを発現させ,LH-GABAの活動抑制が味覚嫌悪学習の想起におよぼす影響を調べる.その後,LH-GABAに興奮性人工受容体hM3Dqを発現させる実験を行い,LH-GABAがCTAの想起において果たす役割を明らかにする.
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