研究課題
現在、世界の肥満者総数は19億人を超え、その数は年々増加し、合併症発症や医療費増大などの問題が生じている。そのような中、申請者は現在までに、妊娠期に過栄養または食餌性葉酸欠乏を負荷した母体の産仔はいず れも肥満感受性が上昇し、ゲノムには共通する特定のDNAメチル化変化が生じていること、 しかし、顕在化する耐糖能障害の誘因や、肝・脂肪の組織像、血清脂質パラメータは異なる ことを見出している。そこで、本研究では、肥満感受性を決定する経世代エピゲノム変化の同定と、その検証を行い、 母体の栄養と仔の疾患発症素因の因果関係について総合的に理解することを目的として、解析を進めている。本研究課題の初年度は、まず、妊娠母体への各種食餌(高カロリー、各種ビタミンの過不足)の負荷を行い、その産仔について、離乳直後から食餌性肥満誘発を行い、肝・脂肪組織の組織学的解析、エピゲノム解析(特に、DNAメチル化解析)、糖・脂質代謝パラメータ解析を行い、母親の妊娠期栄養成分による産仔の肥満感受性への影響を解析した。特に、産仔のエネルギー代謝関連臓器における網羅的DNAメチル化解析は、母親の栄養の影響のみを受けている最終地点として離乳時に行い、肥満が十 分に顕在化してくる3ヶ月齢において、そのメチル化変化とそれに 伴う遺伝子発現変化が残存している遺伝子を抽出した。また、それらの中で、肥満が顕在化している産仔群に共通したDNAメチル化異常を抽出し、プロモーター領域にDNAメチル化異常が生じている遺伝子について、肥満感受性の関与があるか解析を進めた。
2: おおむね順調に進展している
研究遂行、研究成果発表について、当初の予定通り進んでいる。
引き続き、胎内栄養環境がエピゲノムにより臓器の質を決定していること、また、 肥満の顕在化には共通する特定の経世代エピゲノム変化が必要であることを明らかにする。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件)
Biochim Biophys Acta Mol Cell Res
巻: 1870(2) ページ: 119404
10.1016/j.bbamcr.2022.119404