研究課題/領域番号 |
22K09925
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
池田 淳史 岡山大学, 大学病院, 助教 (60710150)
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研究分担者 |
高柴 正悟 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (50226768)
伊藤 達男 川崎医科大学, 医学部, 教授 (80789123)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | シェーグレン症候群 / 制御性T細胞 / long non-coding RNA |
研究実績の概要 |
シェーグレン症候群(SS)は唾液腺に生じる自己免疫疾患で、唾液分泌能の低下により齲蝕や摂食嚥下障害などが発症する。その結果、栄養摂取量の低下を介して健康寿命が短縮するため、社会的に大きな問題となっている。一般にSSを含めた自己免疫疾患の発症・進行には、制御性T細胞(Treg)の異常が関与している。既存のSSに関する研究報告の多くは、唾液腺中に存在するこのTregの数のみに着目し、DNAの塩基配列に依存しない遺伝子の調節機構であるエピジェネティクスの制御によるTregの機能的変化という観点では研究されていない。近年、疾患特異的なlong non-coding RNA(lncRNA)が、エピジェネティクスの制御などを介してTregに影響を与え、自己免疫疾患の発症や進行に関与していることが判明してきたが、SS特異的なlncRNAは発見されていない。 以上から、SS特異的に発現しているlncRNAによるエピジェネティックスの制御を介したTregの機能的変化が、SSの病態に関与しているのではないかという問いが生まれた。従って本研究の主目的を、SS特異的なlncRNA によってどのようにTregの機能が変化するか明らかにし、SSの発症・進行機序の一端を解明することに設定した。 まず、倫理委員会に本実験遂行にあたり、計画書を作成・提出し、承認を得た。そして、岡山大学病院リウマチ・膠原病内科の協力のもと、シェーグレン症候群患者のリクルートを行い、同意が得られた患者から採血を行い、岡山大学病院バイオバンクに資料を登録・保管した。 また、フローサイトメトリーを用いて、研究担当者自身の血液からTregの分離が的確に行えるか確認を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シェーグレン症候群(SS)の病型には、一次性と二次性があり、一次性はさらに、腺型と腺外型に分けられる。岡山大学の倫理委員会には、先行研究として、それぞれ10名の患者抽出を申請し、承認を得ている。そして、現在の患者リクルート状況は、腺型一次性SS患者は8名、腺外型一次性SS患者は4名、二次性SSの患者は8名となっているので、初年度としては概ね順調に進展していると考える。 また、手技的な面では、フローサイトメトリーを用いて、研究担当者自身の血液から制御性T細胞(Treg)の分離が的確には行えるようになってきたが、Tregの割合が当初考えていたものよりも少ないため、現在使用しているRNA抽出キットを変更し、少ない細胞からRNAを抽出できるキットを使用し、安定して高濃度のRNAを抽出できるように工夫しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、フローサイトメトリーを使用して、制御性T細胞(Treg)の分離が的確に行い、新しいRNA抽出キットを使って、安定して高濃度のRNAを抽出できるように手技的な面での上達を図る。その後、岡山大学病院バイオバンクに登録されている試料を使用し、TregからRNAを抽出して、RNAシークエンシングを行い、健常者と比較して、一次性SS患者、二次性SS患者のTreg中に特異的に発現しているlong non-coding RNA(lncRNA)のデータ解析を行う。そこから得られた結果をもとに、患者由来のTregと健常者のTregを培養して使用し、lncRNAがどのような作用を及ぼすのか確認する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
想定していたよりも研究に使用する物品の購入費が低く抑えられ、旅費に関しては、新型コロナウイルスの影響で学会がWebで行われたため、次年度使用が生じた。 使用計画としては、次年度に実施予定の解析にかかる費用等に充当する。
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