研究課題/領域番号 |
22K09927
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
武 洲 九州大学, 歯学研究院, 准教授 (10420598)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 口腔感染学 / p.gingivalis菌 / 軟膜細胞 / 脳血管内皮細胞 / シナプス / 脳バリア / 炎症 |
研究実績の概要 |
本研究ではP.gingivalis(P.g)菌による脳バリア構造と機能破綻の実証、脳バリアにおけるAmyloid betaクリアランス機構崩壊と脳バリア破綻によるシナプス障害について検討を行い、歯周病のアルツハイマー病発端となる新たな分子機序を明らかにすることを目的としている。今年度ではP.g菌の血液脳関門(Brain-blood barrier, BBB)に与える影響について解析を行った。具体的にはヒトBBB機能のモデルと汎用されるhCMEC/D3細胞を用いてP.g菌ならびにP.g菌由来LPS(PgLPS)によるhCMEC/D3細胞(Brain endothelial cells、BECs)におけるバリア機能ならびにシナプス制御関連遺伝子発現について解析を行った。P.g菌による解析を検討した結果、P.g菌に感染したhCMEC/D3ではRAGE産生は増加した。RAGEの増加はNFκB阻害剤Bay11-7082(IκBαリン酸化阻害)の前処理により抑制された。一方P.g菌感染したhCMEC/D3細胞においてCatBも増加し、CatB特異的阻害剤CA-074Meの前処理はP.g菌により誘導されたIκBα分解ならびに増加されたRAGEは発現を抑制した。よってP.g菌により増加されたCatBがIκBαを分解し、NFκB 活性化を持続させるRAGE発現を増大させることが分かった。P.gLPSによる検討した結果、P.gLPSに暴露したhCMEC/D3ではVCAM、Eselectin、CCL2、IL-6、IL-8ならびにRAGEの発現増大が認められた。よってP.g菌感染ならびにP.gLPSに暴露によりBECs にsenescence-associated secretory phenotype (SASP)現象を引き起こし、BECs細胞を老化させることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はP.g菌のBBBに与える影響について検討を行うために、BBB機能のモデルと汎用されるhCMEC/D3細胞を用いた。解析した結果、P.g菌感染したhCMEC/D3細胞において、CatBが増加され、CatBがIκBα分解を分解し、NFκB活性化を持続させることでRAGE発現を増大させることが明らかになった。一方、P.gLPSに暴露したhCMEC/D3細胞においてはVCAM、Eselectin、CCL2、IL-6、IL-8ならびにRAGEの発現増大が認められた。よってP.g菌感染ならびにP.gLPSに暴露により、BECs にsenescence-associated secretory phenotype (SASP)現象を引き起こし、BECs細胞を老化させる可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度はP.gLPS 暴露した主な脳バリアの血液脳関門を担う脳血管内皮細胞(BECs)に、SASP 現象を引き起こすことを見出した。今年度はBECsに着目し、P.gLPSによるBECsの老化誘導メカニズムならびにAmyloid betaクリアランス(BBB構造と機能)について解析を行う。またP.gLPSに暴露したBECsからニューロンへの影響について解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:予算の調整で差額が生じたが、年度内での執行が間に合わなかった。 使用計画:次年度、物品費として速やかに使用する予定である。
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