研究課題/領域番号 |
22K09933
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
大塚 裕忠 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 准教授 (30634844)
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研究分担者 |
野中 直子 昭和大学, 歯学部, 教授 (20307052)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 唾液腺 / 加齢性炎症 / ヒスタミン / リンパ球浸潤 |
研究実績の概要 |
これまで、実験計画に示した通り、老化メカニズム解明のために、ヒスタミンをターゲットとして、そのメカニズム解明に迫る実験を進めてきた。野生型マウスにおいては、加齢に伴って唾液腺を含めた様々な組織への炎症細胞浸潤が生じ、このことが機能低下につながる可能性が示唆されている。しかしながら、こういった現象の報告はされているものの、そのメカニズムについて不明な点も多い。また、ヒスタミンが様々な炎症反応を誘導することが知られている一方で、加齢性炎症とヒスタミンの関係は不明であった。 今年度は、実験計画に基づき形態学的解析を中心に解析を進めるため、我々はヒスタミン合成酵素であるHDCを欠損したマウス(HDC-KOマウス)の加齢個体と野生型の加齢個体の形態解析と統計解析を実施した。その結果、HDC-KOマウスにおいて、加齢に伴う唾液腺内への炎症細胞浸潤が有意に抑制されることが確認できた。 さらに、野生型個体において、浸潤した細胞について、免疫組織化学により、Bリンパ球やTリンパ球を主体としていることが同定された。さらに、加齢に伴うHDCや炎症性サイトカインの発現変化についても解析し、野生型とHDC-KOマウスで異なる傾向にあることが確認された。 上記の結果については、日本解剖学会学術集会で報告を行ったほか、現在、専門学術誌に研究論文を投稿中である。また、野生型で得られた結果は、ヒトの自己免疫疾患であるシェーグレン症候群の症状とも類似しており、現在、治療モデルとしての可能性についても精査を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1か年目は、加齢マウスの唾液腺内に浸潤した細胞の同定を中心に解析を実施し、概ね、順調に進んでいる。しかしながら、組織内へ浸潤した細胞のフローサイトメトリーによる解析は困難であり、現在、分解酵素の濃度など検討しながら、実施を進めている。 一方で、2か年目に予定していたRT-PCRによるサイトカイン発現解析については、すでに開始し、一部データが得られている。以上のことから、概ね、計画通りの進行状況といえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、現在、条件検討を行っているフローサイトメトリーによる解析や、RT-PCRの解析をさらに進めるとともに、老化に関連する因子についても解析を進める予定である。 また、唾液腺においては、培養細胞も確立されているので、実験の進捗状況に応じて、in vtroの実験系を用いて、ヒスタミンのダイレクトな作用についても解析をすすめることも検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
フローサイトメトリーによる解析を行っていないため、今年度、使用予定であった試薬や消耗品の購入が抑えられた。次年度は、上記の解析を実施するための試薬や消耗品等の購入費用に補填する予定である。
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