研究課題/領域番号 |
22K09937
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研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
引頭 毅 朝日大学, 歯学部, 教授 (10360918)
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研究分担者 |
片岡 嗣雄 朝日大学, 歯学部, 講師 (60451390)
森 大気 朝日大学, 歯学部, 助教 (10743544)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 歯垢 / バイオフィルム / 自然免疫 / ホスファチジルセリン結合タンパク質 |
研究実績の概要 |
歯垢は種々の口腔細菌が凝集して歯頚部などに形成されるバイオフィルムであり、細菌と菌体外多糖などのマトリックス、そして代謝産物などを主体として構成されると考えられている。これは環境中で形成される一般的なバイオフィルムの状況から推測されたためでもあるのだが、しかしながら、歯垢は常に唾液や歯肉溝滲出液中の成分に曝され、また歯肉溝から遊出する好中球など免疫細胞の攻撃も受けている。表面には好中球や上皮細胞の死細胞、食物残渣などが堆積する。このような特殊な環境に曝されたバイオフィルムは歯垢の他に存在しないはずである。これを考慮すると、歯垢は宿主由来の様々な因子の作用から影響を受け、あるいは、様々な因子に影響を与えながら複雑な相互作用の元に形成されていると考えるのが妥当と考えられるが、このような考え方は受け入れられていない。我々は歯垢の生物学的性質を根本から見直すことを念頭に、歯垢に堆積されている可能性がある、ホスファチジルセリン結合タンパク質(PBP)を含む様々な宿主由来因子の存在の証明を試みている。 本研究の主な解析方法は、基本的に被験者から歯垢検体を採取し、分子生物学的手法により宿主由来因子を検出するものである。様々な因子を調べる中で明らかになってきたのは、歯垢中にDNAが蓄積されていることである。DNA結合性をもつ唾液成分を解析してみたところ、LL-37と呼ばれる抗菌ペプチドとDNAとが強固に結合し、DNaseからの分解耐性を獲得し、堆積していることが明らかになってきた。さらに、歯垢中にはアミロイド様フィブリルとして堆積している可能性が高い2つの因子の存在も確認されてきている。現在これらの詳細を解析しているところであるが、今後はPBPについても調査しながら、これらの由来や分布、堆積の意義などを調査していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本来解析すべき標的からの乖離をみとめるものの、研究成果はほぼ順調に得られている。すでに一部の研究成果を学会発表ならびに学術誌上で論文として公表することができている。また現在2つの論文作成を行っており、本年度中に研究成果としてを公表できる可能性が高い。これらの状況を総合的に鑑みて本評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
現在、これまでに得られているエビデンスを強化しながら、詳細について解析しているところである。進捗状況の通り、研究成果自体は順調に得られているものの、本来解析すべき標的であるPBPからは乖離している傾向があるため、今後はPBPについても調査しつつ、これら成分の由来や分布、堆積の意義などを精力的に調査していく予定である。研究方法などについては現状維持で問題ないと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入物品等がキャンペーン等により安価で入手できたこと、また予定していた学会がオンライン開催となったことで旅費を使用していないことにより、次年度使用額が生じた。翌年度の研究計画の遂行において有効的に使用できるよう計画したい。
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