研究実績の概要 |
2022年度では, 本研究課題の目的1として挙げた, 口腔扁平上皮癌(OSCC)組織のHE標本上における間質の病理組織学的な検討を行い, それによる層別化を試みた. 上野らは, 大腸癌浸潤に伴い出現する線維性組織の増生と定義されるDR(desmoplastic reaction)を, 好塩基性の細胞外器質が増量した粘液様間質, 炎症細胞浸潤は比較的少ないimmature型, 好酸性で断片化した瘢痕様コラーゲンが混在する間質を含むintermediate型, 粘液様間質と瘢痕様コラーゲンの間質のいずれも含まない間質を含むmature型の3型に分けているが, それに加えてDRが目立たずリンパ球系細胞浸潤が主体の症例を, inflammatory/immune型として, 4型を間質パターン(SP)として分類し, 臨床病理学的因子, 予後との相関を用いて検討した. 232例中, inflammatory/immune型 (84例), mature型 (14例), intermediate型 (78例), immature型 (56例) であった. SPはOSCCの分化度, 脈管侵襲, 神経侵襲, 先進部でびまん性の細胞形態を示す山本・小浜分類の4C, 4D型との相関があった. 5年間の無再発生存率は, inflammatory/immune型 (72.0%) , intermediate/mature型 (66.7%), immature型 (31.2%)であった. immature型が予後不良で, inflammatory/immune型が予後良好であり, 全生存率も同様の結果であった. 多変量解析にて, SPは独立した予後因子であることが見出された. これらの内容をFront Medに論文発表した(Front Med (Lausanne). 2022; 9:859144.).
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今後の研究の推進方策 |
免疫染色を用いて間質の各種マーカー(EMT, 浸潤の関連分子, 癌関連線維芽細胞, 炎症免疫細胞)による層別化を行い, SPにより所見に違いがあるかを検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定から変更があり, 標本作製機材に要する費用がなくなったため, 次年度使用額が生じた. 今年度では, 免疫染色を行うあたり, 種々の抗体購入や周辺機材の購入に当てる予定である.
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