研究実績の概要 |
口腔扁平上皮癌(OSCC)におけるがん免疫微小環境について解明することを目的とし,OSCCの外科的切除例110例を対象として,CD3, CD4, CD8, CD20, CD68, CD163, PD-L1について免疫染色を行い,臨床病理学的因子との相関,予後について検討した.年齢は24-92歳,男 : 女 (61:49),観察期間中央値は1845.5日であった.CD3, CD4, Foxp陽性細胞はTis-T2,Stage0-Ⅱ,神経周囲浸潤なし,Depth of invasion≦10mmで多かった.また,CD68, CD163陽性細胞はGrade1で多かった.CD163陽性細胞が多い群では,有意にRFSが延長していた.PD-L1陽性群(TPS>5%)では有意にCD3, CD4, CD8, CD68, CD163陽性細胞が多かったが,PD-L1の発現の違いによる予後の差は見られなかった. また, 公開データベースから取得したmRNA発現データの解析によって,正常組織に比べてOSCCで特異的に発現が亢進あるいは低下する遺伝子を抽出した.さらに,これまで免疫関連マーカーとして周知されている遺伝子との相関について解析し,分子標的となりうる新規の免疫関連遺伝子/分子としてGBP5を同定した.GBP5の発現がPD-L1の発現および免疫細胞浸潤と強く相関したという結果から,GBP5が抗PD-1/PD-L1免疫療法に対する治療予測マーカーとなる可能性を示した. GBP5が腫瘍で低発現,間質で高発現する例は予後良好であり,GBP5が予後層別化のためのバイオマーカーとして有望視される分子であることを明らかにした.
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定よりも標本作製機材に要する費用が抑えられたため, 次年度使用額が生じた. 今年度では, 成果を報告するための投稿料や, 免疫染色を行うあたり, 種々の抗体購入や周辺機材の購入に当てる予定である.
|