研究課題/領域番号 |
22K09967
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
尾崎 和美 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 教授 (90214121)
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研究分担者 |
湯本 浩通 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 教授 (60284303)
細川 義隆 徳島大学, 病院, 講師 (90346601)
細川 育子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 講師 (50707908)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | バイオフィルム / ナノカプセル / キトサン / ポリフェノール |
研究実績の概要 |
口腔バイオフィルムは,単に細菌が寄り集まった状態でなく自ら分泌する菌体外多糖(Extracellular Polymeric Substances,以下EPS)で菌体周囲を鎧のごとく覆った状態として存在する。これが歯面への強固な定着をもたらし,またEPS内の細菌が産生する有機酸の停滞をまねくなど,う蝕病原性を発揮する重要な因子になっていると考えられている。本研究では, EPSを内部から破壊する可能性を秘めたナノカプセル(Polyphenolを内包したChitosan Nanocapsule,Ch-PolyP-Nc)の合成とその効果検証を行うことを目的とし,前年度においてKhanらの方法(2016)で調製したCh-PolyP-Ncの基本性状(形状や粒径,Streptococcus mutansを被検菌とした最小発育阻止濃度や最小殺菌濃度)を確認した。今年度は,S.mutansを用いたBiofilm formation assayにより,Ch-PolyP-Ncのバイオフィルム形成阻止あるいは抑制効果を解析した。その結果,合成過程で必須な超音波処理の条件によって種々の粒径のCh-PolyP-Ncが得られ,それぞれの粒径のCh-PolyP-Ncで,形成阻止に至らないものの一定のバイオフィルム形成抑制効果を認めた。また,ショ糖存在下で多量に形成させたバイオフィルムに種々の粒径のCh-PolyP-Ncを添加し,一定時間培養したのち残存するバイオフィルムを定量したところ,粒径の違いによる相応の差異を認めた。これらの結果から,Ch-PolyP-Ncのバイオフィルム初期形成における抑制効果に加え,EPSの破壊効果の可能性が示された。これは,う蝕予防の第一歩であるバイオフィルム形成抑制に対するCh-PolyP-Ncの歯科材料としての応用可能性を示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度でCh-PolyP-Ncの合成に必須な超音波処理装置の整備が大幅に遅れたことが今年度の進捗にも大きく影響し,予定していた共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)を用いた形態観察が今年度中に実施できなかった。また,種々の粒径のCh-PolyP-Ncを得ることができたものの,当初に想定している小径(60nm前後)のナノカプセル合成に向けたクロスリンカーの再考,加えてバイオフィルムの完全な形成阻止効果を目指したPolyP物質の追加検討を平行して行っている現状も踏まえ,やや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
Ch-PolyP-NcによるEPSの破壊効果を視覚的に検証するため,今年度実施できなかった共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)だけでなく,走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡による超微観察を行っていく予定である。また,単に形成抑制だけでなくEPSの完全な形成阻止を目指したPolyP物質の追加検討を引き続き行っていくとともに,EPSに包埋されたS.mutansの遺伝子発現,とくにgtfB/C/D geneの変動について検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)研究遂行に必要な試薬が,予定より少額で賄えた。また,学会や研究打合せにおいては可能な限りオンデマンドでの参加・実施に努めることで旅費等を節約できたため。 (使用計画)翌年度分として請求した研究費と合わせて,次年度の研究遂行に必要な物品(とくに,共焦点レーザー顕微鏡や電子顕微鏡観察に必要な消耗品)の購入あるいは共用分析機器(総合研究室の共焦点レーザー顕微鏡や電子顕微鏡をはじめとする各種解析機器)の利用料に用いる予定である。
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