研究課題/領域番号 |
22K09968
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
岩下 未咲 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (80611326)
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研究分担者 |
西村 英紀 九州大学, 歯学研究院, 教授 (80208222)
櫛山 暁史 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (30435820)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ccl19 / マクロファージ / 高脂肪 |
研究実績の概要 |
6週齢の雄性野生型マウスおよび、脂肪細胞特異的にChemokine (C-C motif) ligand 19(CCL19)を高発現させたCcl19 knock-in(KI)マウスに、通常食またはカロリー比40%、60%の脂肪を含む高脂肪食を負荷した。14週齢時に上顎臼歯に絹糸結紮を行い歯周炎を誘導し、2週間後顎骨を採取し歯槽骨吸収量を測定した。その結果高脂肪食負荷により、野生型およびCcl19KIマウスの両方において、通常食群に比べ結紮による歯槽骨吸収量が増大した。高脂肪食群間でのCEJ-歯槽骨頂間距離および歯根露出面積における比較では、個体差が若干大きいこともあり有意差はみとめなかった。 既報では、CCL19が免疫細胞の活性化に影響を及ぼすことが報告されていることから、マウスリコンビナントCCL19刺激によるマウスマクロファージ細胞RAW264.7への影響を検証した。CCL19刺激後のマクロファージでは、炎症性サイトカインtumor necrosis factor-αおよびinterleukin-1βの遺伝子発現が増大傾向であった。 これまでの結果を合わせると、Ccl19KIマウスではマクロファージにおける炎症性サイトカインの産生が亢進し、さらに、高脂肪食によりCcl19KIマウス脂肪組織では、野生型マウスに比べ、より強く血管内皮細胞が傷害や刺激を受けている可能性が示唆される。 現在動脈硬化モデルApoE-/-マウスとCcl19KIマウスを交配し、Ccl19KI-ApoE-/-マウスの系統確立を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の研究機関の異動により実験環境の整備が必要となったため、計画よりやや遅れている。研究分担者、協力者とともに順次解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
Ccl19KIマウスではマクロファージにおける炎症性サイトカインの産生が促進される可能性が示唆される。高脂肪食負荷によりCcl19KIマウスでは野生型マウスに比べ、血中遊離脂肪酸濃度が高いことは以前検証済である。さらにこの度Ccl19KIマウスでは野生型マウスに比べ、脂肪組織における血管内皮細胞の活性化、凝固性亢進など血管の恒常性維持機能の破綻および、動脈硬化促進に関与する遺伝子の発現が亢進していることが示されたことから、動脈硬化モデルApoE-/-マウスとCcl19KIマウスを交配して作製したCcl19KI-ApoE-/-マウスにおいて、①代謝異常を発症しやすい日本人が歯周病に代表される軽微な炎症を合併した際に動脈硬化が進展するかどうかを明らかにする。さらに同モデルにおいて、②動脈硬化病変の初期に発現が変動する新規分子を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
代表者の研究機関の異動により実験環境の整備に時間を要し、計画よりやや遅れているため次年度使用額が生じた。マウスの臼歯結紮歯周炎モデルでは、高脂肪食負荷により歯槽骨吸収が増悪することがCcl19KIおよび野生型両方の遺伝子型で見られた。加えて、高脂肪食負荷によりCcl19KIマウスでは野生型マウスに比べ、脂肪組織における動脈硬化促進に関与する遺伝子発現が亢進する結果を得ている。今後は動脈硬化モデルApoE-/-マウスとCcl19KIマウスを交配して作製したCcl19KI-ApoE-/-マウスを用いた検証を進め、動脈硬化病変の初期に発現が変動する新規分子を同定する。さらに歯周炎併発モデルでの検証を行う。
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