研究課題/領域番号 |
22K09974
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
成瀬 桂子 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (30387576)
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研究分担者 |
菊池 毅 愛知学院大学, 歯学部, 准教授 (40421242)
中村 信久 愛知学院大学, 歯学部, 准教授 (50619773)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 歯周病 |
研究実績の概要 |
歯周病は、その罹患率の高さと重症化より糖尿病合併症の一つとされるが、糖尿病を伴った歯周炎の発症・進展機序はいまだ十分には解明されていない。我々はこれまでに、ストレプトゾトシン誘導糖尿病モデルラットを用いた検討により、糖尿病状態では歯周組織の組織血流が低下しており、実験的歯周炎の惹起により歯肉におけるニトロ化ストレスが亢進することを明らかにした。組織血流の低下やニトロ化ストレスの亢進は、糖尿病腎症や糖尿病性神経障害など他の糖尿病合併症に共通する病態である。そこで、我々は糖尿病を伴った歯周炎の発症・進展機構には、糖尿病による代謝異常を中心とした糖尿病合併症共通の発症・進展機構が関与すると考えた。 本研究では、糖尿病によるポリオール経路の活性亢進に焦点をあて、糖尿病を伴った歯周炎におけるポリオール経路活性亢進の意義を明らかにするために、ポリオール経路の律速酵素であるアルドース還元酵素ノックアウトマウスを用いた歯周炎および糖尿病合併歯周炎におけるポリオール経路の役割を解明する。我々の先行研究より類推して、糖尿病合併歯周炎と他の糖尿病合併症は、共通した発症・進展機構を介しており、ポリオール活性亢進はその中心的役割を果たしていると考えており、その検証を実施する。糖尿病合併歯周炎においてポリオール活性亢進の関与が明らかになれば、その律速酵素であるアルドース還元酵素阻害薬は治療薬として大変有効であるだけでなく、歯周病の発症予防まで適応が広がる可能性もあると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、歯周炎におけるアルドース還元酵素の役割を明らかにする目的で、アルドース還元酵素欠損マウス(ARKO)に対する実験的歯周炎の惹起と解析を行った。ARKOと野生型マウス(WT)の大臼歯間にligature wireを留置し、実験的歯周炎を惹起した後、2週間後に歯周炎の評価として、病理組織学的解析、免疫組織染色、mRNA発現(real time PCR法を実施した。また、歯槽骨吸収について、μCT解析を実施した。WTでは歯周炎の惹起により、歯肉の炎症性細胞浸潤が増加し、歯肉におけるTNF-alpha, iNOSの遺伝子発現が増加していた。また歯周炎により歯槽骨吸収が有意に増加した。ARKOにおける歯周炎惹起ではWTに比較し、歯肉におけるiNOS遺伝子発現が有意に低下していた。
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今後の研究の推進方策 |
ARKOおよびWTにストレプトゾトシンを用いて糖尿病を誘導した後、実験的歯周炎を惹起し、糖尿病状態での歯周炎におけるARの働きを明らかにする。。ストレプトゾトシン投与2週間後に、ligature wire 留置し実験的歯周炎を惹起し、一定期間後に歯周炎の程度、血流障害、歯槽骨吸収について評価する。糖尿病の評価については、体重、血中脂質、血糖、血中インスリン値を測定するとともに、その他の血中因子について炎症性サイトカインを測定する。さらに、糖尿病によるポリオール経路の活性亢進とその他の代謝異常であるPKC活性異常、グリケーションの亢進および酸化/ニトロ化ストレスについて、免疫組織染色およびWestern blot解析を実施し、糖尿病合併歯周炎におけるポリオール活性亢進と他の代謝異常との関連を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
病理組織解析において、脱灰など必要なことより、組織標本作成まで2カ月程度必要で年度内に終了しなかったため。2023年度は脱灰が終了し得られた病理組織標本に対し、予定どおり免疫組織染色を実施する。
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