研究実績の概要 |
Tooth wearは,化学的因子と機械的因子との相互作用によって進行する。エナメル質に生じたマイクロクラックはtooth wearの起点となり,その進行に深く関与するものと考えられる。しかし,マイクロクラックの発生およびtooth wearの進行に関してはエナメル質の化学的組成あるいは機械的性質の違いによっても異なる可能性があるが,その詳細については不明な点が多い。そこで,異なる化学的組成あるいは機械的性質を有するエナメル質がマイクロクラック発生およびtooth wear進行に及ぼす影響を解明することを目的とした。 初年度には,エナメル質の再石灰化および強化が期待されている亜鉛含有グラスアイオノマーセメントがエナメル質のtooth wearに及ぼす影響についてウシエナメル質に対して衝突摩耗試験から検討した。その結果,亜鉛含有グラスアイオノマーを応用したエナメル質は,これを用いないものに対して有意に低い摩耗性を示した。初年度に得られた結果を基に,改質エナメル質の化学的分析を元素分析(EDX)およびX線回析法(XRD)によって分析を行うとともに,機械的性質の変化を微小硬さ試験から検討した。 その結果,亜鉛含有グラスアイオノマーとともに水中浸漬したエナメル質のヌープ硬さは,コントロールとした精製水浸漬に比較して有意に高いヌープ硬さを浸漬2日後から示した。しかし,XRDによるハイドキシアパタイトの結晶分析からは,浸漬期間による明らかな変化は認められなかった。EDXによる分析では,亜鉛含有グラスアイオノマー応用エナメル質からは,F, Zn, Al, Si, P, Ca などの元素が検出された。亜鉛含有グラスアイオノマー自体の元素分析では,上記の元素とともにLaが検出された。
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