研究課題/領域番号 |
22K10011
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研究機関 | 公益財団法人ライオン歯科衛生研究所(研究部研究開発室) |
研究代表者 |
石原 裕一 公益財団法人ライオン歯科衛生研究所(研究部研究開発室), 研究部研究開発室, 研究開発室長 (50261011)
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研究分担者 |
佐治 直樹 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 病院 もの忘れセンター, 副センター長 (30624910)
松下 健二 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 研究所 口腔疾患研究部, 部長 (90253898)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 歯周病 / 認知症 / 臨床的認知症尺度 / 軽度認知機能低下 / 咬合力 / 舌口唇 運動機能 / 反復唾液嚥下 / 舌圧 |
研究実績の概要 |
2021年8月から2022年4月までに約200名の被験者データと口腔細菌を採取を行った。その後、臨床的に認知症の程度を診断する臨床的認知症尺度(CDR)に基づいて被験者を健常群、軽度認知機能低下(MCI)群、認知症群に分類し、各種検査項目について、認知機能低下と歯周病、口腔機能との関連性を統計学的に検討した。その結果、健常群とMCI群の歯周組織破壊はほぼ同程度であったが、認知症群は有意に歯周組織破壊していた。 各被験者群間で、残っている歯の数について有意差はなかった。健常者群、MCI群、に比べ、認知症群は、舌や口唇の動き、嚥下の回数、舌の押す力が有意に低下していた。次にどこの部位の歯を失っているか被験者群間で比較したところ、認知症群では、臼歯を失っている被験者の割合が高く、実験的に臼歯を抜歯された高齢マウスの認知機能が低下したことに類似していた。全身疾患既往歴などについては健常者群、MCI患者群、認知症患者群の間で有意差が認められなかったことから、認知機能低下に口腔機能低下が深く関連している可能性が考えられた。認知症群は明らかに歯周病の重症化していたことを考えると、高齢者は歯科を受診して歯周病予防処置や歯周治療を継続的に行うことと、患者自身による口腔清掃習慣の確立と周囲の協力者による口腔清掃のサポートが認知症の発症・進行予防に寄与することが示唆された。 以上の内容は2022年6月第65回春季日本歯周病学会学術大会にて、3演題発表。2022年11月には第41回日本認知症学会学術集会にて1演題発表し、現在公表にむけて準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
被検者の選択とデータ収集はほぼ予定通り収集でき、学会発表も4度実施できた。しかし、口腔細菌サンプルの菌叢解析は、やや遅れているため、概ね順調に進展していると評価した。菌叢解析が遅れている理由は、当初業者にすべて依頼する予定であったが、解析費用が予定よりかなり高いことを把握し、解析方法を変更することとした。DNA抽出、PCR増幅、データマイニングは研究分担者が行い、シークエンス解析のみ新たに選定した業者に依頼し、解析費用を少なくするようにする。倫理委員会書類、研究計画書、共同研究契約書の修正等は行い、2023年度には解析が進められると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、口腔細菌サンプルの菌叢解析と学会発表、認知機能低下、歯周病病態、口腔機能の関連に関する公表
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年実施予定の菌叢シークエンス解析を2023年に実施するため助成金を繰り越した。
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