研究課題/領域番号 |
22K10019
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
細矢 明宏 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (70350824)
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研究分担者 |
吉羽 邦彦 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30220718)
荒川 俊哉 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (40306254)
建部 廣明 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (40638293)
溝口 利英 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (90329475)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Gli1 |
研究実績の概要 |
歯根膜に多分化能を有する組織幹細胞(歯根膜幹細胞)が存在することが明らかにされているが、歯根膜幹細胞の骨芽細胞への分化メカニズムは不明な点が多い。近年、Cre-loxPシステムを用いた細胞系譜解析でα-平滑筋アクチン (SMA)、Axin2、Gli1、レプチン受容体 (LepR) を発現する歯根膜細胞が、組織修復時に骨芽細胞へ分化することが示された。従って、これら4種の遺伝子は歯根膜幹細胞のマーカーとして有用であると考えられる。しかし、歯周組織再生時における歯根膜幹細胞の骨芽細胞への分化メカニズムについては、これまでほとんど検討されてこなかった。 本年度はGli1-CreERT2/ROSA26-loxP-stop-loxP-tdTomato (iGli1/Tomato)マウスの上顎第一臼歯を近心へ矯正移動、あるいは抜歯した際の骨形成に対するGli1陽性細胞の機能を検討した。矯正移動の実験では、牽引側の歯根膜においてGli1陽性細胞が骨芽細胞へ分化し、新生骨を添加的に形成することが明らかになった。一方、圧迫側の歯根膜ではGli1陽性細胞が線維芽細胞へ分化し、歯根膜線維の改変に寄与することが示された。また、抜歯後の抜歯窩においても、抜歯後も残存した歯根膜のGli1陽性細胞が骨芽細胞へ分化することが観察された。Gli1-CreERT2/Rosa26-loxP-stop-loxP-tdDTA (iGli1/DTA)マウスでGli1陽性細胞を枯渇させたマウスで同様に抜歯をすると、抜歯窩の骨形成が著しく減少した。さらに、これらの骨芽細胞分化過程においては、Gli1陽性細胞の子孫細胞がBMP4を分泌し、リン酸化Smad1/5/8の発現が上昇したことから、Gli1陽性細胞の骨芽細胞分化にはBMPシグナリングが関与することが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Gli1を含む幹細胞マーカーの骨芽細胞分化に関する形態学的解析を行い、本年度は4報の論文を発表した。当初の計画ではGli1に注目して研究を進める予定であったが、他のマーカーを加えながら幹細胞研究を進めることが出来ている。 一方、歯根膜幹細胞を株化する実験は、作製した株化細胞の幹細胞性が確認できないため、次年度に実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
歯根膜幹細胞をラベルしたマウスとp53欠損マウスを掛け合わせ、これらのマウスから得た歯根膜幹細胞を株化する。株化細胞の幹細胞性を確認し、株化歯根膜幹細胞を樹立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
形態学的解析に使用する試薬を、次年度使用額と合算して購入するため。
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