研究課題/領域番号 |
22K10020
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
横瀬 敏志 明海大学, 歯学部, 教授 (90245803)
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研究分担者 |
加藤 邑佳 明海大学, 歯学部, 助教 (10906697)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | レーザー照射 / 歯髄培養細胞 / エピジェネティクス / 象牙質形成 |
研究実績の概要 |
これまでに、10週齢のメスSDラットの下顎切歯から酵素法で分離した歯髄培養細胞を用いて、半導体レーザー(波長808nm)を0.5W, 120J, エネルギー密度15J/cm2で照射し、その後の歯髄培養細胞に対してDspp,BGgp Alp,のmRNA遺伝子発現に対する影響を調べた。培養開始後、3週間後に細胞からtotal RNAを抽出し、Real time PCRにて分析したとろころ、レーザー照射によって全ての遺伝子発現が非照射群に比較して有意に亢進することが確認された。さらに、象牙質形成の指標になる、石灰化結節の形成が同様に亢進したことにより、レーザー照射によって象牙芽細胞への分化が亢進することを確認できた。さらにこの亢進のメカニズムを調べる為に、Wnt10a, Lef-1とOxytocin receptorの関係を調べた。レーザー照射によってOxytocin receptorとWnt10aの遺伝子発現が亢進することが見出された。これはレーザー照射によって細胞分化に重要なウイントシグナルのカノニカル経路が刺激されたことを示している。さらにこれらのレーザー照射された歯髄培養細胞のDNAのメチル化をELISAで調べたところ、非照射群の歯髄培養細胞に比較してDNAのメチル化が有意に50%増加していることが明らかとなった。この結果はレーザー照射によって象牙芽細胞への分化の亢進と象牙質形成に関連する遺伝子の発現が誘導されていることを示しており、さらにこの遺伝子発現の調整にDNAのメチル化すなわちエピジェネティクスが関連する可能性が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラット歯髄培養細胞に半導体レーザー(波長808nm)を0.5W, 120J, エネルギー密度15J/cm2を照射したところ、象牙芽細胞分化が亢進し、象牙質形成が誘導された。これは象牙質形成に関連するDsp p,Bgp, Alpの遺伝子発現の亢進からも確認できた。さらにこの象牙質形成亢進のメカニズムには、Wntシグナルの中のカノニカル経路の活性化が関連することが明らかとなった。すなわちWnt10a ,Lef-1の遺伝子発現がレーザー照射によって亢進することが示された。一方、培養歯髄細胞にレーザーを照射するとDNAのメチル化が亢進することがわかった。これはレーザー照射におよってDNAのcPcアイランドにメチレーションが誘導されて、RNAへの転写をコントローるしていることが考えられた。この結果は半導体レーザーを照射することによってDNAに対してエピジェネティクスを誘導していることを示しており、象牙質形成亢進のメカニズムにエピジェネティクスが深く関与することが示唆された。このように本年度の研究はレーザーによる象牙質形成亢進にエピジェネティクスが関与するエビデンスが得られた。
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今後の研究の推進方策 |
レーザー照射が歯髄培養細胞に対して象牙芽細胞への分化を亢進させ、象牙質形成を促進させることが確認できた。さらにその作用にはエピゲネティクスが関与している事が明確になった。次の段階ではレーザー照射によって、引き起こされるメチル化がどの遺伝子に起きているかを網羅的に調べる必要がある。特にWnt10aやOxytocin receptorの遺伝子発現調節に対してレーザー光照射によってメチル化が起きているかを具体的に調べる。これに加えて、現在使用しているレーザーは半導体なので、その他の波長レーザー(炭酸ガスレーザー、E r:YAGレーザーとNd:YAGレーザー)を同様に培養歯髄細胞に照射してDentinogenesisへの影響とDNAのメチル化への作用を調べる予定である。さらに、照射エネルギーの違いが象牙質形成に対してどのように影響するかをかく波長のレーザーで検証し、レーザー照射エネルギーの違いがDNAのメチル化に対してどのように影響するかを検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は主に実験のための消耗品に対して使用してきた。その結果、培養器具や試薬類が中心となり、本年度の実験終了時で残額が906円となった。この時点で残額を次年度へ繰越し、同様に消耗品に充てる予定とした。
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