研究課題/領域番号 |
22K10032
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
池田 正明 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (20193211)
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研究分担者 |
丸川 恵理子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (40419263)
池田 やよい 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (00202903)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 再生 / 骨 / 生体材料 / 炎症 / 低酸素 |
研究実績の概要 |
従来の生体材料や幹細胞を用いた骨再生療法においては、大型の骨欠損への適用に限界がある。その要因の一つは骨欠損部の血流不足である 。骨折の治癒過程においては、血管新生と軟骨形成(仮骨形成)、およびそれに続く軟骨内骨化が重要な役割を担っている。骨折治癒過程、特に 血管新生と軟骨形成を再現させる骨再生法の開発は、従来法の問題点を大きく改善させる可能性がある。最近、無菌性の自然免疫応答(炎症) や低酸素状態を誘導する生体材料が、血管新生、幹細胞の浸潤および軟骨形成に寄与し、骨や心筋の再生を促進することが報告された。そこで本研究は、血 管新生と軟骨形成を誘導できる生体材料(物質)を明らかにし、軟骨内骨化を介した新しい骨再生療法の開発に貢献することを目的としている。 本年度は、骨折の治癒過程を再現するのに有効と思われる生体材料を用いて、骨折初期過程の再現と骨再生への効果の検討をおこなった。その結果、骨欠損部の骨再生に非常に有効である抗酸化剤(仮称A)および炎症賦活剤(仮称B)を発見した。マウスの頭蓋冠骨に骨欠損を作成し、A とBを含む足場材料を移植したところ、骨欠損部の30%-90%に石灰化が認められた。一方、生理食塩水を含む足場材料を移植した群では石灰化は全く認められなかった。組織学的な解析をおこなったところ、当初想定していた軟骨の形成は認められず、膜内骨化によって骨の再生が起こったものと推定された。研究代表者らが見出した抗酸化剤(A)および炎症賦活剤(B)は、人体への毒性がなく、安全性が高い生体物質であることから、新しい骨再生療法の開発に貢献する成果であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
令和4年度は、骨折の治癒過程を再現するのに有効と思われる生体材料を用いて、骨折初期過程の再現と軟骨内骨化の検討をおこなった。当初の計画では、抗酸化剤(低酸素状態を惹起)としてタンニン酸、免疫賦活剤(炎症の賦活)としてザイモサン含むヒアルロン酸ゲル(軟骨分化に適した細胞外基質)を作成し、骨再生効果を検討する予定であった。しかしながら、別の抗酸化剤(A)および炎症賦活剤(B)が骨欠損の再生に非常に有効であることを発見した(未発表データ)。4週令のマウスの頭蓋冠骨に直径3 mmの骨欠損を作成し、A とBを含む足場材料(コラーゲン)を移植した。マイクロCTによる解析の結果、2週間後に骨欠損部の石灰化が認められ、4週後には骨欠損部の30%-90%に石灰化が認められた。一方、生理食塩水を含む足場材料を移植した群では石灰化は全く認められなかった。 組織学的な解析をおこなったところ、軟骨の形成は認められず、したがって、当初想定していた軟骨内骨化ではなく膜内骨化によって骨の再生が起こったものと推定された。したがって、抗酸化剤(A)および炎症賦活剤(B)を含む足場材料として、軟骨分化に適した細胞外基質であるヒアルロン酸ゲルを用いる必要がないため、足場材料としてすでに医療用として市販されているコラーゲン製品を使用することにした。さらに効率的な骨欠損部の再生には抗酸化剤(A)の濃度、浸透圧、pHなどの条件が、骨再生に重要であることが明らかになった。まだ実験によって骨再生の程度にばらつきが大きいため、さらに条件検討をおこなっている
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今後の研究の推進方策 |
当初、抗酸化剤と炎症賦活剤としてそれぞれ使用する予定であったタンニン酸やザイモサンは、生体吸収性や生体親和性に難点があった。これまでの研究の結果、それらに代わり、生体吸収性・生体親和性の高い抗酸化剤(A)と炎症賦活剤(B)が有効であることを発見した。このことにより、令和5年度に以降に行う予定であった生体材料の検討は、既に令和4年度中に終了したことになる。したがって、令和5年度以降は、令和4年度に見出した生体吸収性・生体親和性の高い抗酸化剤(A)と炎症賦活剤(B)を用いてマウス頭蓋冠骨欠損部に移植する動物実験を継続し、骨再生にとって最適な条件を検討するとともに骨再生のメカニズムの解析をおこなう。移植後0-4週間のμ-CTによる経時的な石灰化解析の後、移植組織を脱灰し、組織学的解析および免疫組織学的解析 (HIF-1α、CD31、コラーゲンなど)をおこなう。それに加えて、移植3-7日後に移植部位を摘出し、炎症性細胞や未分化幹細胞などの細胞浸潤、低酸素プローブを用いた低酸素状態、および血管新生を解析するとともに、定量 RT-PCR 法を用いて骨分化マーカーの発現を解析する。以上の解析を通じて、炎症の賦活化と低酸素環境によって炎症性細胞や未分化幹細胞などの細胞浸潤および血管新生が起こり、骨化を誘導することを明らかにする。 さらにより大きな骨欠損に対する有効性を調べるため、大型実験動物を用いて検討をおこなう。ラットの頭蓋冠・顎骨 の骨欠損における骨再生効果を解析するとともに、将来の臨床応用を見据えてビーグル犬を用いた予備実験を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度以降の研究目標を令和4年度中に達成したので、前倒し支払請求をおこなって令和5年度に行う実験を開始した。しかしながら、2年分の実験を令和4年度中に全て消化するには時間が十分ではなかった。そのため、次年度(令和5年度)使用額が生じたが、これは令和5年度に使用する予定だった予算を前倒し支払請求したものであり、本来、使用する予定だった令和5年度に予定通り使用する予定なので問題はない。
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