研究課題/領域番号 |
22K10038
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
菊地 聖史 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (50250791)
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研究分担者 |
河野 博史 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 講師 (20507165)
熊澤 典良 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (60284907)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 医療用ロボット / 歯科用CAD/CAMシステム / 歯牙切削 / CNC |
研究実績の概要 |
本年度の研究実績の概要は、次のとおりである。 (1)口腔内切削装置の再設計と試作:本歯科治療ロボットシステムの中核をなす口腔内切削装置は、従来の研究によって改良すべき点が明らかになった。そこで、同装置の構造や材質の見直しを図った。具体的には、「工具位置決め機構」や「給排気・給水経路」、「工具回転機構」について、基本設計と詳細設計をやり直した。これに基づき放電加工機やNCフライス盤等の工作機械を利用して金属部品を製作した。これらの工作機械では一部の複雑な形状の部品の製作が困難であったので、光造形方式の3Dプリンターとキャスタブルレジンで原型を製作し、鋳造する方法を試みた。しかし、造形条件に関する情報が不足していたため、様々な条件で試行し、良好な結果が得られる条件を決定した。また、原型を埋没する際に細部へ気泡が付着することによって球状突起が発生し、除去できないため不良品となる問題が生じた。そこで、小型の真空埋没器を考案し、その試作品を埋没時に使用することで鋳造による金属部品製作の目処が立った。なお、同真空埋没器については、実用新案と意匠登録の出願を行った。 (2)制御装置の改良:制御用コンピューターの起動時や終了時に口腔内切削装置に供給される圧縮空気や冷却水の電磁弁などが誤動作し、工具が急に回転するなどの問題があったので、安全装置を製作した。具体的には、制御用プログラム(LinuxCNC)のチャージポンプ信号を利用し、その信号の有無をウォッチドッグ用のマイコンで検出することで、制御用プログラムが正常に動作していないときには電磁弁やモーターに供給する電源を遮断するようにした。 (3)新しい口腔内切削装置の検討:上記口腔内切削装置とは異なる機構の装置を検討するため、パラレルリンク機構による装置を試作し、ダイレクトティーチングや協調動作の制御を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
半導体やコネクタ等の電子部品の供給不足により入手に時間がかかったり設計を変更する必要があったため。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、次のとおりである。 (1)試作システムの構築:口腔内切削装置とその駆動装置、インターフェース、制御用コンピューターと制御用ソフト(カスタマイズしたLinuxCNC)などからなる歯科治療ロボットシステムを構築し、歯列模型に対して口腔内スキャナーによる形状測定から自動形成まで通して行って、操作性や切削精度などを評価する。また、実用化に向けた問題点を明らかにし、その解決策を検討する。想定される自動形成の大まかな手順は、次のとおりである。(a)印象材を用いて歯列に印象用トレーを装着し、さらに口腔内切削装置装着用アダプターを装着する。(b)口腔内スキャナーで形成対象歯と装置装着用アダプターの形状測定をする。(c)得られた形状データをCAD/CAMソフトに取り込み、装置装着用アダプターの位置などを基準として工具の原点座標を求めた上で形成形状の設計とツールパス(NCデータ)の生成を行う。なお、CAD/CAMソフトは、従来の研究に基づいて自動形成専用のものを新規に開発して使用することを想定しているが、本研究の範囲を超えるため、既成の機械系CAD/CAMソフトで代用する。また、設計に際しては、窩洞等の図を別途作成し、CADの下絵として利用する。同ソフトで生成されるツールパスは、歯の自動形成に最適化されたものではないが、形成対象歯の大きさに合わせて加工領域を設定するなどして使用する予定である。(d)得られたNCデータを制御用コンピューターに読み込ませ、歯列に口腔内切削装置を装着して自動形成を実行する。 (2)新しい口腔内切削装置の設計:試作口腔内切削装置は3軸加工であるが、より自由度の高い加工に対応した口腔内切削装置の概念設計を試みる。必要に応じて3Dプリンター等で検討用模型を製作する。新たな技術については、特許出願を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)装置の設計変更などのため。(使用計画)次年度使用額は、翌年度分として請求した助成金と合わせて研究に必要な物品費や旅費などに充てる予定である。
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