研究課題/領域番号 |
22K10048
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研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
中東 潤 福山大学, 工学部, 准教授 (40341200)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 水素 / チタン合金 / 結晶粒微細化 / 耐力 / 引張特性 |
研究実績の概要 |
本年度は、歯科医療用チタン合金の一つであるα+β型Ti-6Al-7Nb合金に水素処理法(水素吸蔵-溶体化・マルテンサイト化-熱間圧延-脱水素)を適用させ、結晶粒の微細化(ナノ組織化)を目指した。水素吸蔵後のTi-6Al-7Nb合金のβ変態点を組織観察法によって把握した後、最適な水素吸蔵量、熱間圧延温度を調べた。その結果、まず水素吸蔵後のTi-6Al-7Nb合金のβ変態点であるが、0.5wt.%の水素吸蔵量で約200K程度低下することがわかった。次に、この結果を基に水素処理を試みた。水素吸蔵量の異なる試料(0.3~0.9%wt.%)を作製、さらに圧下率80%が可能な熱間圧延温度を調べて試みた結果、水素を0.5wt.%程度吸蔵させ、その後β変態点よりも100K高い温度で溶体化・マルテンサイト化し、熱間圧延温度を923K、脱水素温度を873Kとすることで、均一な微細粒組織が得られることが分かった。ただし、水素吸蔵量を0.7wt.%以上にすると組織の均一性が低下することも分かった。以上の結果より、α+β型Ti-6Al-7Nb合金が水素処理法によって微細組織化するための条件は概ね把握することができた。水素処理によって微細組織化したTi-6Al-7Nb合金の常温引張試験を行った結果、0.2%耐力は1318MPaを示し、約30%の高強度化が達成された。ただし伸びが3%とやや低いので、水素処理条件の更なる最適化が必要である。α+β型チタン合金においては、バルクの状態で結晶粒径を1μm以下にする結晶粒微細化法が極めて少ないことが知られているが、この水素処理法を行うことで、本合金の微細粒組織が得られるという知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歯科医療用チタン合金の一つであるTi-6Al-7Nb合金への水素処理法(水素吸蔵-溶体化・マルテンサイト化-熱間圧延-脱水素)の適用は、最適水素処理条件が概ね把握できたこともあり、順調と捉えている。水素処理法を行う上で必要な水素処理炉の修理が半導体不足の影響を受けてやや遅れたということもあり、微細組織の組織的特徴の把握までには至らなかったが、次年度予定していた常温引張特性の把握ができた。
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今後の研究の推進方策 |
TI-6Al-7Nb合金の最適水素処理条件と微細粒化した合金の常温引張特性は概ね把握できたので、今後は予定通り微細粒Ti-6Al-7Nb合金の超塑性引張特性を明らかにしていく。具体的には超塑性伸びを変形応力に及ぼす温度と初期ひずみ速度の影響や、超塑性変形後の組織を観察して超塑性特性を明らかにする。また、2022年度に予定していた微細粒組織の組織的特徴を調べていく。
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