研究実績の概要 |
三次元積層造形技術は、三次元データから複雑な形状物を自動的に直接製造する付加製造技術である。従来の鋳造技術に代わる金属材料の新たな製造技術として、金属粉末による付加製造が産業界で急速に普及拡大している。医療分野においては、患者の骨格構造に最適なカスタムメイド人工関節など整形外科分野に応用されつつある。歯科分野でも国産のコバルトクロム合金粉末が薬事承認されるなど臨床応用への環境整備が整いつつある。一方で、付加造形装置の条件設定のみならず、適用可能な金属材料の種類、形状形成、造形物の物性や精度など克服すべき課題も多く、これらの課題を抽出し適応症例に最適な「造形装置-合金選択-製作条件」を明確にすることが本研究の骨子である。本課題では、金属粉末積層造形技術による補綴装置製作におけるプロトコールを確立し、新たな歯科医療技術に適合した金属材料による加工技術を構築することを目的としている。 三次元積層造形用コバルトクロム合金粉末(Co:60-68.5%, Cr:26-30%, Mo:4.5-7%, 他)と比較試験片として鋳造加工した金銀パラジウム合金(Ag:46%, Pd:20%, Cu:20%, Au:12%, 他)を使用した。三次元積層造形試験片の製作における造形条件は、走査速度(300mm/s)レーザー出力(150W)、ハッチ間隔(0.15mm)に設定し、造形方向は積層方向に対して平行(0°)とした。現在、歯科用金属材料の試験法(JIS T6004:2019)に準拠した定形試験片(引張試験用、3点曲げによるヤング率測定用)を製作しているところである。
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