研究課題/領域番号 |
22K10095
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
三浦 宏之 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (40199956)
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研究分担者 |
野崎 浩佑 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (00507767)
駒田 亘 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (10447493)
瀧田 美奈 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 特任助教 (30848263)
根本 怜奈 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 助教 (50706893)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 咬合 / CAD / CAM / 加工精度 |
研究実績の概要 |
我々は,マイクロメートルオーダーで咬合時の歯の変位量を計測することに成功し,歯は機能時に変位し,その変位量や変位経路,上下顎歯列の咬合関係は,咬みしめ強さによっても変化することを報告している.また,従来型のシリコーン印象材および石膏模型を用いて咬合時における咬合接触部位の再現性を検討したところ,安静時の歯列と咬合時の歯列では歯の位置関係が異なり,咬合印象法により咬合時の咬合接触像を近似することが可能であることを明らかにしている.口腔内カメラを用いた光学印象は,従前のシリコーン印象材などを用いて石膏模型を作製するプロセスを排除し,コンピューター上で歯の三次元形態データを再現することが可能となり,バーチャル上で歯冠補綴装置の設計をすることが可能となる.しかしながら,歯冠補綴装置の咬合調整量を削減できる咬合印象法に代わる手法は皆無であり,作製した歯冠補綴装置の咬合調整は必須となる.優れた歯科補綴装置の作製には,適切なCADソフトウェアの使用と,適切な条件の下でのNCデータの作成と切削加工が必須となる.そこで,本年度は優れた適合性を有する歯冠補綴装置の作製のための切削加工条件を最適化することを目的として,CAD/CAM冠レジンブロックを様々な送り速度、スピンドル回転数にて切削加工し,内面の適合精度を評価した.送り速度を低下させることにより内面適合性が向上したが,スピンドル回転数は影響を及ぼさなかった.加工条件として,切削加工時間を考慮すると,送り速度1000㎜/min,回転数25000rpmが適切であることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,CADソフトウェアを用いてクラウンのデザインを作成し,切削加工装置を用いた際のクラウンの加工精度を検討した.支台歯として下顎小臼歯を選択し,マージン形態は,ディープシャンファーとした.支台歯を想定したコバルトクム合金製の金型を製作した.通法に従い作業用模型を製作し技工用スキャナーを用いて支台歯モデルのCADデータを作成し,歯科用CADソフトウェアを用いて小臼歯冠のCADデータを作成,CAMソフトウェアを用いて小臼歯のNCデータを作成した.被削材にはCAD/CAM冠用レジンブロックを用いた. CAM装置には,歯科用ミリングマシンを使用した.CAMソフトウェアにてスピンドル回転数25000rpmにて様々な送り速度(①150,②675,③1000,④1500,⑤2000mm/min)で切削加工し,加工に要する時間を測定した. 製作したクラウン内面にブラックシリコーンを注入して原型に設置し,硬化後撤去してホワイトシリコーンにて裏打ちした.その後,頬舌方向に切断し,光切断型顕微鏡を用いてブラックシリコーンの厚みを計測した.計測部位はa:頬側マージン,b:頬側軸面中央,c:頬側咬合面,d:舌側咬合面,e:舌側軸面中央,f:舌側マージンとした.各条件にて切削加工した際の加工時間は,①102分,②25分,③17分,④13分,⑤10分であった.送り速度の増加は,加工時間を減少させた. 内面の適合性を評価したところ,送り速度の低下に伴い,a,f点の間隙量が減少した.しかしながら,回転数を増加させても④,⑥,⑦では差は認められなかった.
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今後の研究の推進方策 |
歯の変位量を定量的に調整できるin vitroのモデルを作製し,変位量が異なる変位モデルの3次元データを作成する.3Dプリンタを用いて歯槽骨および歯の3次元モデルを作製する.歯の変位を模擬するために,上顎第1大臼歯歯槽窩に,極微動用マイクロメータヘッド(精度1μm)を歯軸方向に設置し,先端に基準球を設置する.基準球を規定量挙上した後に,反対側に設置したダイヤルゲージを用いて高さ方向の変位量の評価を行う. 次に,規定量移動した基準球を,口腔内カメラを用いて光学印象を採得する.それぞれの3次元データを,3D測定データ評価ソフトを用いて移動量を評価し,光学印象の歯軸方向の測定限界の評価を行う.また,ヘッド先端を歯冠形態に変換し,再度,規定量移動した歯冠を,口腔内カメラを用いて光学印象を採得する.歯冠形態から,基準点もしくは基準面を選択し,歯の移動量の再現性の評価を行い,光学印象の精度を明らかにする. 上顎第1大臼歯を単冠にて補綴治療を行う患者より,通法にて印象採得した作業用模型および対合歯模型を作製し,咬合器上にマウントする(静的モデル).また,咬合印象法により同様に模型を作製し咬合器上にマウントする(変位モデル).まず,工業用3次元計測システムを用いて,3次元データを採得し,参照用データとする.本計測システムは精度が5μmであり,非常に高い正確度を有する.次に,口腔内カメラを用いて,石膏模型を光学印象し,3D測定データ評価ソフトを用いて,参照用データと比較する.通法の3次元データと咬合印象法による3次元データを比較し,歯の変位量を推測する.次に,静的モデルの個々の歯のデータをそれぞれ抽出し,最小二乗法により変位モデルへの重ね合わせを実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,咬合モデルの作成が達成できなかったため,モデル作成のための機材の準備を次年度に持ち越した.そのため,未使用額と次年度使用額を併せて以下の項目に関して使用する予定である.①研究成果発表のための旅費(国内会議,国際会議)②試料作製に必要な機材,消耗品の購入など.
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