研究課題
多くの癌種において癌細胞のT細胞抑制性リガンド PD-L1(programmed cell death ligand-1)の発現が高いと患者の生命予後が不良である。これは免疫細胞と癌 細胞とのPD-1/PD-L1免疫チェックポイントシグナルによる免疫抑制作用が原因と考えられ、さらに腸内のマイクロバイオームがこの抑制作用に影響することが報告されている。したがって、癌幹細胞周囲の微小環境(癌幹細胞ニッチ)においても同様な機序が働いている可能性が考えられる。しかし、現在までにマイクロバイオームと癌幹細胞ニッチにおけるPD-L1発現動態について解析した報告はなく、癌幹細胞ニッチにおける免疫制御機構については全く不明である。本研究において口腔癌幹細胞の細胞特性を有するCD133陽性細胞を用いて免疫調節因子(PD-1、PD-L1、PD-L2)、未分化細胞マーカー、接着分子マーカー、上皮間葉転換 を制御する転写因子の遺伝子発現についてRT-PCR法にて解析した結果、CD133陽性細胞において免疫調節因子(PD-1、PD-L1、PD-L2)の遺伝子発現はみられなかったが、E-Cadherinならびに未分化細胞マーカーであるOct遺伝子とTwist遺伝子発現を認めた。臨床的検討として、治療前の口腔癌患者および健常人の腸内ならびに口腔内細菌の多様性解析を行うために、口腔癌患者と健常人の糞便とデンタルプラークを採取し、16SrRNAのT-RFLP法菌叢構造解析を行った。その結果、口腔癌患者において口腔内細菌叢のPorphyromonas,Prevotellaの占有率が健常人と比較し有意に高く、腸内および口腔内細菌叢は健常人とは異なる菌叢構造(dysbiosis)を有していた。さらに、次世代シーケンサーによるメタ16S解析においても、種レベルで異なるクラスターを形成していた。
3: やや遅れている
臨床的検討として、腸内細菌叢や口腔内細菌叢の解析を行うための症例数が予定より少なかったため、臨床検体を用いた解析を十分に行うことができなかった。次年度、臨床症例をさらに収集して、臨床検体の解析を行う予定である。
臨床的検討として、正常人ならびに未治療の口腔癌患者における腸内細菌叢や口腔内細菌叢の解析を行うための症例数を収集して、臨床検体での解析を行う予定である。さらに、解析を行った口腔癌患者の臨床動態や生検材料のPD-L1,PD-1発現、治療経過を検討し、口腔癌患者のマイクロバイオームの状態が口腔癌細胞ニッチにおけるPD-L1の発現にどのような影響を与えているか検討を行う。
臨床的検討として、腸内細菌叢や口腔内細菌叢の解析を行うための症例数が予定より少なく、臨床検体を用いた解析を十分に行うことができなかったため次年度使用額が生じた。次年度は、解析する症例数を増やすとともに今まで解析したデーターと臨床動態をとりまとめ、学会報告と論文報告費用に使用する。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 4件)
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