研究課題/領域番号 |
22K10145
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
相川 友直 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (00362674)
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研究分担者 |
宮川 和晃 大阪大学, 大学院歯学研究科, 助教 (50635381)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 骨吸収 / 扁平上皮癌 / SCC / 破骨細胞 / インターロイキン7 |
研究実績の概要 |
マウス扁平上皮癌細胞株SCC7細胞由来の4系統の亜株細胞を正常免疫を有するC3H/HeJマウス、すなわち、シンジェニックマウスの頭頂部に細胞を移植し、それらの骨吸収状態をマイクロCT撮影および組織学的に評価した。4系統の亜株のうち最も骨吸収をきたす細胞株(SCC7A株)と最も骨吸収が少ない細胞株(SCC7B株)を研究に用いた。2つの亜株細胞は遺伝子配列的に同一細胞であった。 SCC7A亜株腫瘍の骨吸収部位に発現する遺伝子とSCC7B亜株腫瘍の骨吸収に乏しい部位に発現する遺伝子の特徴をRNAシークエンス法で比較検討した結果、SCC7A亜株腫瘍の骨吸収部にはインターロイキン7(IL-7)が高発現していた。SCC7A亜株の腫瘍の骨吸収は、抗LI-7中和抗体の局所投与あるいは腹腔内投与で抑制されたため、SCC7A亜株細胞のがん微小環境における骨吸収機序として IL-7を軸とした解析に取り組んだ。SCCA亜株腫瘍とB亜株腫瘍の骨吸収の差異、破骨細胞形成の差異、骨吸収関連遺伝子発現の差異、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の差異について検討した。その結果、以下の結果を得た。①シンジェニックマウス移植腫瘍ではSCCA亜株の骨吸収と破骨細胞形成が見られたが、ヌードマウス移植腫瘍ではなかった、②シンジェニックマウス移植腫瘍のTILをCD3抗体染色で評価すると、SCC7A亜株腫瘍内のに有意なT細胞浸潤が観察された、③シンジェニックマウスのSCC7A亜株腫瘍のRANKL遺伝子発現、TRAP遺伝子発現、カテプシンK遺伝子発現は抗IL-7中和抗体投与により著しく低下した。④TILのFACS解析のよりCD4陽性T細胞がRANKLを発現した。 SCC7A亜株が産生するIL-7がT細胞のRANKL発現を誘導し、破骨細胞形成、骨吸収に関与することが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題申請後で、課題採用以前の2022年1月に前任機関(大阪大学)から現機関(広島大学)に移動となった。異動前後の数ヶ月間は研究遂行できなかった。そのため、共同研究者である分担者が大阪大学で研究を遂行しており、現在は現機関での研究体制も整得ることができた。本年度に計画していたSCC7A亜株細胞腫瘍内の浸潤リンパ球の解析にも着手できており、概ね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
扁平上皮癌腫瘍内のT細胞浸潤とT細胞での破骨細胞誘導因子であるRANKL発現が本腫瘍の骨吸収に関連していると考えており、そのままいかなるサブセットのT細胞が誘導され、どの細胞がRANKLを発現するのか、発現されたRANKLは骨吸収に関連しているのか、扁平上皮癌細胞が産生するIL-7がとT細胞でのRANKL発現の軸がどこまで重要であるのかを検討する予定である。 手法としてはTILのFACS解析を進める。加えて、臨床検体を用いて、口腔扁平上皮癌の骨吸収病変におけるIL-7発現と破骨細胞形成を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年1月に異動したため、現機関での研究セットアップに半年以上を要した。その間の研究遂行は研究分担者と打ち合わせを行いつつ、前任機関で研究研究遂行した。分担者への分担金以外にも、本課題の先行研究に対する補助金で購入した試薬を有効に活用することができたため、未執行予算が生じた。 研究セットアップも終了しており、試薬購入の物品費や学会参加等の旅費で予算執行できる見込みである.
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