研究課題/領域番号 |
22K10151
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
富田 和男 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 講師 (60347094)
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研究分担者 |
桑原 義和 東北医科薬科大学, 医学部, 准教授 (00392225)
五十嵐 健人 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (00822876)
佐藤 友昭 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (10284887)
栗政 明弘 東北医科薬科大学, 医学部, 教授 (80343276)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / フェロトーシス / がん / 脂質過酸化 / 過酸化水素 / 酸化ストレス / 放射線・薬物抵抗性 / リポキシゲナーゼ |
研究実績の概要 |
本研究はミトコンドリアを標的とした放射線・薬物抵抗性の克服を目的としており、子宮頸がん細胞株であるHeLaと口腔がん細胞株であるSASをおよび、その治療抵抗性細胞株HeLa-R, SAS-Rを用いて解析を行っている。CRR細胞においては、ミトコンドリアの膜電位の低下や、ミトコンドリアや細胞膜の酸化を司り、活性化に鉄を要求するリポキシゲナーゼ12の発現減少が報告されているので、今年度は、まず、リポキシゲナーゼ12をCRR細胞で過剰発現しストレス添加後の細胞内過酸化水素量及び脂質の過酸化を解析した。その結果、リポキシゲナーゼ過剰発現細胞では、コントロールに比べ、ストレス添加後の内在性過酸化水素量および脂質の過酸化の増大がみられた。親株を用いてリポキシゲナーゼ阻害薬NDGA処理を行うとストレス処理後の内在性の過酸化水素量や脂質の過酸化が抑えられること、CRR細胞では内在性の2価鉄の量が少ないことから、鉄依存性の脂質過酸化の量がリポキシゲナーゼの活性に依存しており、鉄依存性細胞死であるフェロトーシスを制御することが予想された。また、CRR細胞は放射線照射を行わないと半年から1年でその抵抗性が失われるが(NoIR細胞)、その際のミトコンドリア機能について膜電位を指標に調べたところ、CRR細胞で低下していたミトコンドリア膜電位はNo-IR細胞で回復していた。また、酸素消費量を親株、CRR細胞、No-IR細胞で比較したところ、CRR細胞で低下していた酸素消費量がNo-IR細胞で親株と同レベルに回復していた。CRR細胞では解糖系の酵素であるホスホフルクトキナーゼの発現が上昇していることから、ミトコンドリア機能と治療抵抗性に強い関係があることを再確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、リポキシゲナーゼの過剰発現を行うとフェロトーシスが誘導される方向に進むことが確認出来たため。
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今後の研究の推進方策 |
放射線に抵抗性を示すCRR細胞に対してミトコンドリア移植、解糖系の抑制、電子伝達系の活性化などを行い、その後放射線や過酸化水素などでフェロトーシスを誘導し、未処理と比較して、フェロトーシス誘導が起こりやすくなるか検討する。また、ミトコンドリアをターゲットとした治療抵抗性を克服できる薬物候補として挙げられるメトホルミンや牛車腎気丸などの効果も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は、研究分担者が研究分担金を研究打ち合わせ等で使用予定だった分担金が、研究代表者の父が突然逝去したため日程調整ができず、未使用となったためである。研究打ち合わせ自体は、研究代表者が私費で研究分担者のところまで赴いて行っており、また、メールやZoom会議等で打ち合わせも行っているので、研究遂行に特に支障はなかった。次年度繰り越し分は、前年度保留となった研究打ち合わせの旅費と実験を行う試薬代に使用予定である。
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