研究課題/領域番号 |
22K10156
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
福田 正勝 明海大学, 歯学部, 講師 (10311614)
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研究分担者 |
坂東 健二郎 明海大学, 歯学部, 教授 (50347093)
佐藤 毅 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (60406494)
佐々木 惇 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (80225862)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 口腔癌 / p53 / CD44 / c-Met / 細胞死 / ポリフェノール / ピセアタンノール(PIC) |
研究実績の概要 |
5例の口腔扁平上皮癌患者の生検組織ホルマリン固定パラフィン包埋材料について、HE染色標本にて病理診断した後、CD44、c-Met、NF-kBに対する抗体を用いた免疫組織化学的検索を行い、その発現強度および局在を確認した。その結果、5例全例の腫瘍細胞の細胞膜にCD44およびc-Metタンパク質の陽性反応を、腫瘍細胞の核および細胞質にNF-kBの強陽性反応を認めた。 5種のヒト口腔癌細胞株におけるc-Met、CD44、NF-kB遺伝子とタンパク質の発現状況を定量性RT-PCR法とWestern blot法にて確認した。その結果、各細胞株においてc-Met、CD44、NF-kB mRNAの構成的な発現を示した。 また、SAS細胞において最も強いc-Met mRNAとタンパク質発現量を示した。CD44 mRNAとタンパク質発現量はSAS細胞とHSC-3細胞において他よりも強かった。5種の口腔癌細胞株におけるCD44およびc-Metタンパク質の発現プロファイルをフローサイトメトリーにて解析したところ、同様の結果を得た。 次に、SASとHSC-3細胞におけるCD44、c-Met mRNAの発現をsmall interfere (si) RNAを用いてノックダウンしたところ、両細胞の増殖活性は明らかに抑制され細胞数は減少した。また、いずれのノックダウンにおいてもカスパーゼ-3/7、-9の活性化が起こり、アポトーシスが誘導された。以上の結果から、 p53遺伝子変異株であるSAS細胞およびHSC-3細胞において、癌幹細胞のマーカーであるCD44およびc-Metがその増殖活性に重要な働きを担っていることが示唆された。 次に、ポリフェノールのピセアタンノール(PIC)を濃度を変えて24時間作用させた時の細胞状態の変化について解析したところ、いずれの細胞も10マイクロモルのPICにて細胞死が誘導された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フローサイトメトリーによる5種類の口腔癌細胞株におけるCD44およびc-Metの発現プロファイル決定とCD44のウエスタンブロッテイングにおいて、思うようなデータが出ないまま時間と労力を費やしてしまったが、ようやく安定したデータが出だしたので、次年度からは当初の計画以上の達成度が得られるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
① 引き続いて、多数の口腔扁平上皮癌の生検組織材料を用いて、免疫組織化学的にp53、CD44、c-MetおよびNF-kBの発現強度および局在を確認する。これらの結果と個々の症例の臨床病理学的諸因子との相関関係について解析を行う。 ② CD44およびc-Metの発現増強が認められたHSC-3細胞とSAS細胞を用い、in vitroの系で研究を行う。c-Met、CD44陽性であるHSC-3とSAS細胞の接着性・遊走能を検索し、同細胞株のc-MetおよびCD44をノックダウン、あるいはポリフェノールを濃度と時間を変えて作用させた際の口腔癌細胞の形態・接着性・遊走能それぞれにおける変化について顕微鏡観察し上記非処理コントロールと比較する。この際のc-Met、CD44の発現およびNF-kBの活性動態を検索するとともに、癌細胞の増殖阻害効果を検索し、p53変異型と野生型細胞株とでそれぞれの結果を比較検討する。細胞死が誘導されれば、アポトーシスの状態をCaspase-Glo assayにて、オートファジーの状態をWestern blot法にてそれぞれ確認する。さらにポリフェノールであるピセアタンノール (PIC)を作用させた際の細胞死において、CD44およびc-Metが関与している可能性を検索する。 ③ c-Met、CD44に対する蛍光抗体を用いて口腔癌細胞株からフローサイトメトリーにてc-Met陽性細胞、CD44陽性細胞、c-Met・CD44両陽性細胞それぞれを純化して単一細胞として分離抽出し、継代培養にて増やし、それぞれに対して前実験で得たPICの指摘濃度・時間を直接作用させた際のc-Met、CD44およびNF-kBの活性動態をmRNAおよびタンパク質レベルで解析し、細胞死の検索を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者である、埼玉医大歯科口腔外科の佐藤 毅は、本研究において使用する口腔癌の生検組織材料の詳細なリストアップの担当でしたが、倫理申請に思いの外手間取ってしまい(原因は、倫理規定の改定に対して事務方が不慣れであったため)、その結果、令和4年度は5症例のみのリストアップおよび標本の作製という結果となってしまったために次年度使用金額が生じてしまいました。 しかし、新規の倫理申請は既に承認されているため令和5年度は、スムーズに研究活動が進むことが予想されるため、ここですべて清算できるものと考えております。
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