研究課題/領域番号 |
22K10159
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
北野 尚孝 日本大学, 医学部, 准教授 (50424726)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 癌 / 遺伝子治療 / ゲノム / がん併用療法 |
研究実績の概要 |
令和4年度はヌードマウス移植腫瘍に与える影響とマウスの生命予後に与える影響をドセタキセル(DOC)、E3C1とDOC+E3C1による遺伝子治療で比較し検討した。まず、がん細胞であるSCCKN細胞をヌードマウスの背部皮下に移植腫瘍を作成し、DOC、E3C1とDOC+E3C1を用いて週に1回の治療を行った。経時的に移植腫瘍の大きさを計測し、マウスの生命予後を評価した。また、遺伝子治療中に副作用の発現の有無を常に観察した。さらに、DOCで治療を行った群、E3C1で治療を行った群、CDDP+E3C1で治療を行った群の生存率をKaplan-Meierの生存曲線にて検討した。 SCCKN細胞を移植したマウスでは、治療後7日目の腫瘍体積の平均が、コントロール治療群のマウスで1527±554.155mm3、DOC治療群のマウスで536.167±93.58mm3、E3C1治療群のマウスで219±26.128mm3、DOC+E3C1治療群のマウスで213.833±52.76mm3であった。 また、生命予後においてはコントロール治療群のマウスは治療開始から24日目に全頭死亡し、DOC治療群のマウスは治療開始から42日目に全頭死亡した。そしてE3C1治療群のマウスは治療開始から45日目に全頭死亡し、DOC+E3C1治療群のマウスは治療開始から48日目に全頭死亡した。 また、どの治療群のマウスにおいても治療中に副作用の発現は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度の研究でE3C1によるマウス移植腫瘍に対する遺伝子治療で移植腫瘍の腫瘍縮小効果や移植腫瘍を有するマウスの生存率の向上が確認された。 しかし、E3C1による遺伝子治療とドセタキセル(DOC)などのタキサン系抗がん剤を併用し治療を行うことで移植腫瘍の腫瘍縮小効果や移植腫瘍を有するマウスの生存率の向上の機序は解明されていなかった。それが、令和4年度の研究でDOC単独で治療を行うよりもDOC+E3C1の併用療法を行う方が腫瘍の増殖速度を減少させることやマウスの命予後を副作用の発現を伴わず改善することが確認された。 このことにより、次年度より、DOCまたはE3C1単独治療とDOC+E3C1の併用療法を行った移植腫瘍の組織にどのような影響が及ぼされたのかを検討する。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度のDOC、E3C1とDOC+E3C1による遺伝子治療を行ったヌードマウス移植腫瘍が縮小される効果を認め、さらにCDDP+E3C1で治療を行った腫瘍が最も腫瘍縮小効果が顕著となることより、腫瘍の縮小にはチューブリンが大きく影響を与えているのではないかと考えられた。それ故、令和5年度はDOC、E3C1とDOC+E3C1による遺伝子治療を行ったヌードマウス移植腫瘍がどのような影響を受けているのかを組織学的に検討する。まず、がん細胞をヌードマウスの背部皮下に移植腫瘍を作成し、DOC、E3C1とDOC+E3C1を用いて週に1回の治療を行う。治療開始から14日目のマウスの腫瘍を摘出する。その後、摘出した腫瘍を凍結し切片を作製し、DOC、E3C1とDOC+E3C1による治療が与える効果についてH-E染色を行い、検討する。さらに切片を作製して後に、抗アルファチューブリン抗体、ベータチューブリン抗体、ガンマチューブリン抗体によって染色し微小管の重合や脱重合の関係を蛍光顕微鏡を用いて観察する。さらに、摘出した腫瘍をDAPIで染色し、DOC、E3C1とDOC+E3C1による治療が腫瘍細胞の核に与える影響を検討する。
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