研究課題/領域番号 |
22K10168
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鵜澤 成一 大阪大学, 大学院歯学研究科, 教授 (30345285)
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研究分担者 |
佐藤 啓子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (70410579)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 口腔 / 扁平上皮癌 / 酸性環境 / がん微小環境 |
研究実績の概要 |
口腔扁平上皮癌の薬物療法には白金製剤や分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤が主に用いられている。しかし、がん微小環境の影響を受け、完治を目指す上では問題点が多い。がん微小環境の重要な特徴の1つに酸性環境が挙げられ、口腔扁平上皮癌の微小環境は pH 5.6~7.3の酸性~中性とヘテロな環境であるとされている。しかし、従来の抗がん剤の評価は中性条件下のみで行われており、がん微小環境の特徴である酸性条件下を対象とした薬剤開発が行われた報告はない。そこで本研究では、実際のがん微小環境である酸性環境下の再現を行い、現在の口腔癌の薬物療法に用いられている薬剤の薬効の評価とFDA承認薬(1,134種類)のライブラリーを用いてスクリーニングを行うことで、酸性環境が既存薬にもたらす影響、さらにはドラッグリポジショニングによる、治療応用可能な新たな候補薬剤の同定を行う。最終的には同定された薬剤を用いた新規治療法の基盤を構築することを目的としている。 まず始めに分化度の異なる2種の口腔扁平上皮癌細胞株に対して、いずれの細胞株でも、画一的に酸性環境で長期・安定培養可能な手法を確立した。続いて、口腔癌治療のkey drugであるシスプラチンの薬効をこれら細胞株を用いて、酸性環境および中性環境下で細胞増殖試験にて評価したところ、酸性環境ではシスプラチンの薬効が低下しており、酸性環境における薬剤耐性が示された。さらに、酸性および中性環境下においても、癌細胞株に対して、薬効を示す薬剤の探索をFDA承認薬のライブラリーを用いてスクリーニングを行った。結果、中性および酸性環境下で、現在、治療で使用されている薬剤よりも、強い抗腫瘍活性を示す薬剤が数種類発見された。今後、スクリーニングで同定された薬剤の中から生体に対し、副反応が少なく、安全性の高いと考えられる薬剤を選択し、in vitroおよびin vivoでの薬効の検証を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ計画通り研究が遂行できているため。
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今後の研究の推進方策 |
スクリーニングで選択した薬剤の口腔扁平上皮癌細胞株(HSC-3とHSC-4)に対するin vitroでの薬効と機序の解析を行うと同時に、in vivoでの薬効の検証を行っていく。具体的にはHSC-3をマウスに注射し、腫瘍を形成し、尾静脈から薬剤を投与し、腫瘍のサイズの変化や病理組織像から薬効を検証していく予定である。これらの結果をまとめ、最終的には、実臨床へ応用することを目的としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は予定通りに遂行できているが、使用予定の消耗品の見積もりなどにわずかな誤差が生じたためだと思われる。
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